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また明日、と言われても、部活までの十分間だけで教えられることなどそんなにないのだが、とりあえず彼は挨拶としてそう言っただけのようだった。
余程早く部活に行きたかったのか、彼が私の机に広げた教科書はそのままだ。物寂しそうに捲られたページがこちらを見ていた。

「……はあ」

物を大事にしないのか、教科書だから大事にしないのか分からなかったが、ともかくここは私の机なので、教科ごとにまとめて揃える。
彼の机は私の前だ。ふらふらと揺れる頭が見えていたから、余計に私は不安に思ったのだった。
明日よ、来ないでくれと願っていても仕方ないので、とりあえず新品のノートを取り出した。
本当は新しい理科のノートになるはずだったのだが、こうなったからには諦めるしかない。彼の学力を考慮すると、一刻も早くノートを作らなければならないのだ。新品のノートなど、家に帰ればいくつかあるのだから。

日が暮れてノートが赤く染まる。それを見ながらこつこつと書き進め、電気をつけなければ目が悪くなってしまうくらいの時間になってしまった。勉強をしていると時間を忘れてしまうのはいつものことだが、あまり遅いと家族が心配してしまう。慌てて帰り支度をした。
少し肌寒い秋の季節、もう木の葉が紅葉を超えて落ちていっている。もう冬が来てしまうのだと少し寂しくなった。秋は好きだったが、最近は秋が早くすぎる感じがする。
もう外で本を読めないな、と小さくため息をついた。

「ただいま戻りました」
「おかえりなさい。遅かったのね」

母にそう言われて、うん、と返事をして靴を脱いだ。

「着替えたら厨を手伝ってもらえる?相坂さんが今日お休みなの」
「相坂さんが……?お風邪ですか?」
「そうみたい。寒くなってきたから」

母も忙しそうで、それじゃあよろしくね、と私に告げてぱたぱたと急ぎ足だ。今日はそんなにお客さんはいなかったはずだが、厨房を牛耳る相坂さんが風邪でお休みとなれば話は別だ。
急いで作業着に着替えて厨房へと向かう。途中すれ違った従業員さんに明るく声をかけられたが、それには会釈をして足を止めない。

「あっ、お嬢!お疲れ様です!」
「お嬢〜!待ってました!」
「お、お疲れ様です。今どういう状況ですか……?」

状況把握をしてすぐさま指示を出す。お客様をお待たせする訳にはいかないし、厨房をよく手伝う私が一番指示を出しやすい。

「この旅館、お嬢がいなきゃ回りませんね……」
「そんなことないと思うけど……」

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作者名:ReG | 作成日時:2022年1月22日 18時

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