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勉強会三日目。今日からテスト三日前になるので、部活がお休みになる。土日を挟むので、実質五日間部活は中止だ。
彼は不満そうにしていたが、補習だとそもそも部活に出られないと聞いて、ようやく焦ったようにノートを開いた。

何が言いたいかと言うと、今日は学校が閉まるまで彼と勉強をしなければいけないと言うことだ。憂鬱以外の何者でもなかった。
他のクラスメイトも切羽詰まっているのか、何人か残って教科書と問題集を睨んでいた。日頃から勉強をしない人はかなりいるのだな、と横目に見て思った。

「じゃあ、ええと……国語はお家でやってもらって……、最後の方の長文問題は、明日やろうか」

げっとあからさまに声を出すので、やはり彼は宿題などやらないだろうという推測は当たっていた。

「ほ、補習、受けることになるよ」
「…………やる」

渋々受け取り、早くもノートの表紙を睨むので、今日はやらないからね、ともう一度言っておく。

「先日やった歴史の、振り返りをするね。一回見たり聞いたりしただけだと、頭に入らないから……」
「……分かった」

本当に嫌そうだったが、一度やったからかまだ返事はしてくれた。まあ彼は家でやっていないらしいから、振り返りというものがそもそも苦手なのかもしれなかった。
総じて勉強嫌いなのだな、と勝手に納得した。
問題集を開いてランダムに一つずつ問題を出す。先日教えたところが答えになるように慎重に選んだ。

「じゃあ、安土桃山時代が終わったのは何年?」
「……う」

早くも言葉に詰まった。進まないが答えを出すまで待つことにする。分からない時は素直に分からないと言ってくれるので、これはきちんと彼が記憶を辿っている証だ。

「短かった、よな」
「!そう、長い歴史の中でもかなり短い期間だけ、だよ」

一応覚えていたらしい。振り絞るような言葉に感動して、少しだけ声が大きくなった。案外その声がクラスに響いたので、すぐに落ち着きを取り戻す。

「よ、40年」
「惜しい、30年。1573年から1603年まで」

誤差だろ、と言う彼は不満げにしているので、慌ててフォローに入る。

「でも、短い期間だったってことは、覚えていたでしょう。不正解だけど、決して悪い訳じゃないよ」

私の必死で拙い励ましを、彼は正面から聞いて、

「……そうかよ」

と、少し口を突き出してそっぽを向いた。
嬉しかった時にする仕草だと、その時は全く分からなかったので、やはり影山くんは謎だ、と苦笑した。

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作者名:ReG | 作成日時:2022年1月22日 18時

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