9 ページ9
.
齋藤さんの突然かつごもっともなアドバイスから2週間。お見立て会当日。
美月「Aは緊張しないタイプ?」
自主練を一緒にしてくれた美月と話しかけてくれた梅とは結構話せるようになってきた。
「あんまりしないかも」
美月「さすがー!」
「でも一万人って聞くとやばいかもってなる」
美月「いきなり一万人はやばすぎるよね」
先輩方が積み重ねてきたものがあるからこの会場でお見立て会ができる。
そのありがたみを忘れずに活動したい。
美波「Aめっちゃ顔色悪いよ?どうしたの?!」
緊張はしないタイプだと本気で思ってた。けど、開演直前になって私のファンの方からの評価を思い出してしまった。
コネ、やらせ、初々しさがない、乃木坂の終わりの始まり
そんな言葉を書き込んだかもしれない人たちの前に今から立つんだ。
一万人がそんな風に思ってるかもしれないところに飛び込むんだ。
「怖い、」
美波「怖いよね」
梅だってはちゃめちゃに緊張してるはずなのに、座り込んでしまった私のことを優しく抱きしめてくれる。
美波「ほんとに無理だったらこっちに戻ろう」
美波「無理しないで」
近くの梅の声と、遠くで泣いてる大園さんの声がふわふわ聞こえる。
桃子「桃子アイドルの演技なんてできないもん!どうすればいいの」
わーってしゃがみ込む大園さんをスタッフさんが宥めてる。
そっか。私には演技がある。
物心ついた頃からずっとやってきたものだ。
アイドルを演じればいいのか。
「うめ、大丈夫そう。いけそう」
美波「ほんと?嘘つかなくていいんだよ」
「うん。大丈夫」
立ち上がったタイミングで自分の中の何かが切り替わった。
.
455人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:yurima | 作成日時:2024年2月6日 23時