8_mizuki side ページ8
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三期生の顔と言っても過言じゃないくらい、この人の注目度は高い。
きっとキツイ言葉も受けてるのに、誰にも相談してないらしい。というか三期の誰とも話してる姿を見ない。
三期の中でちょっとだけ浮いてる。
話しかけてみたいなぁという気持ちを抱えたまま話しかけるタイミングが掴めなくてもどかしい。
「ダンス苦手なんです」
お見立て会に向けたリハーサルが続いてる毎日。
終わったから帰ろうと思ってリハ室から出ようとしたら、小川ちゃんがダンサーさんに相談し始めた。
ダンサー「上手じゃん」
「下手ですよ。どうしたら上手になれますか」
盗み聞きはよくないけど、リハ室の外の廊下で立ってたら、話が聞こえてくる。
ダンサーさんの上手じゃん、と小川ちゃんの下手なんです、攻防が続いてて笑っちゃう。
「私はただでさえ嫌われてるので、ダンスはうまくないと」
「制服のマネキンを踊れるほどかっこよくないですし、」
小川ちゃんは注目を浴びてる分アンチがいるだけで、別に嫌われてない。
かっこいいというより可愛いイメージだけど、制服のマネキンの世界観を一番綺麗に表現するのは小川ちゃんに決まってる。
桃子センターの命は美しいで会場の温度がぐんと上がって、裸足でsummer、ガールズルールできっと盛り上がって、最後の曲ですと言った後に乃木坂の誇るかっこいい楽曲という流れを壊さない人だと思う。
「もうちょっと練習していってもいいですか?」
部屋の外からの盗み聞きだから2人の表情はわからないけど、今日は9時から20時まで歌って踊ってのハードスケジュールだった。これからさらにダンスなんてありえない。
「体力だけは自信あるんです。せっかくの長所を活かしたいんです」
確かにどれだけ踊っても小川ちゃんがばててるところはみたことない。
ダンサー「ちょっとだけだよ」
美月「あの!私も残って練習します」
気づいたら、リハ室の中で右手を上げてた。
「山下さん?」
美月「美月って呼んで!私も一緒に練習する」
オーディション中に話しかけて、綺麗に交わされた時ぶりの会話。
話したこともないのに2人きりで練習はちょっとアレかもしれないけど、センターの子がこんなに頑張ろうとしてるのを聞いただけで帰るなんてできない。
「ありがとう。美月!」
美月「うん!」
やっと目が合った。
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作者名:yurima | 作成日時:2024年2月6日 23時