17_asuka side ページ17
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「子役をやってて、マネージャーさんがほとんどお母さんみたいな感じだったんですよ」
飛鳥「うん」
大園ちゃんのために持ってきたティッシュの箱を撫でながら、ポツポツと話が始まる。
なんだか表情が幼くなったような気がする。
「物心ついた時から一緒にいてくれたマネージャーさんと家でしか会えないお母さんだったらマネージャーさんの方が私からしたらお母さんみたいなもので」
飛鳥「うん」
「マネージャーさんも娘みたいに可愛がってくれたのに、私中三で反抗期になっちゃって。ずっと大人にニコニコしていい子でいることに疲れちゃって」
「もう嫌だ。学校のみんなみたいになりたい。とか言って楽屋で泣きじゃくって、そしたらマネージャーさんがごめんねごめんねって謝ってきて」
国民の孫として、各方面から期待を背負ってきた人の話。
確か芸能界に入ったのはオムツのCMからとかいう経歴だった気がする。国民的ヒットのお魚ソングを歌ってるところとか篤姫の小さい頃を演じてるのをテレビで見てたあのAちゃんが乃木坂のTシャツとプリーツスカートを身に纏って目の前で泣いてるんだから、人生何があるかわからない。
「もうやめよっかって言ってくれて、高校進学のためにお仕事をセーブしてたのを利用して中学卒業と同時に引退しました」
「それで一年会ってなかったんですけど、去年の夏に連絡が来て2人で会ったら、Aがスポットライトを浴びてる姿がもう一回見たい。オーディションだから落ちたら私も諦める。って言って三期生オーディションのサイト見せられて、」
「ほとんど育ててくれただいすきな人からのお願いだから断るわけにはいかないじゃないですか。で書類審査受かっちゃって。それで会場行ったらいろんな人が小川Aちゃんだ!って言われて」
「そしたら私ここで落ちたらただの恥ずかしい人じゃんって思っちゃって子役時代から鍛えられたオーディション術を思い出してニコニコしてたら合格しちゃいました」
困ったように笑う小川さんを見てたらなんか涙がじゅわってなった。泣かないけど。
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作者名:yurima | 作成日時:2024年2月6日 23時