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3日目、ダブルアンコール。
高校生以上の三期生も参加させていただけることになっていた。
もう出番だというのに私の腕に自分の腕を組んで離れない桃子。
「もう行かなきゃだよ」
何も言わずに首を横に振ってる。
「あ、高山さん!」
一実「どーしたー?」
話したこともない高山さんが少し前を横切ったから声をかけてしまった。
ステージに出るまで後1分しかないのに、着替えて突っ立ってるだけの私たちに優しい微笑みを向けてくれる。
「大園が、」
一実「あぁ〜ももちゃん!」
桃子「むり、」
一実「大丈夫だよー!」
状況を説明し切る前に察してくれて桃子に優しい言葉をかけてくれる高山さん。
麻衣「また泣いてるの!泣かないよ!」
桃子を見つけた白石さんがさささーと私と桃子の頭を撫でて階段を登ってステージに出ていく。
「もう行かなきゃですよね、」
一実「そうだねぇ。ももちゃん!出るだけでいいからね」
桃子「はい」
一実「Aちゃんも頑張ってね」
高山さんも颯爽と階段を登っていってしまった。
先輩に初めて名前を呼んでもらった気がする。嬉しい。
「桃子、行こう」
首を振り続ける桃子を引っ張ってステージに出れば、そこには爆音のガールズルールが流れてて、先輩方と三期生が会場中に散らばってファンサービスをしてる。
いろんな先輩が私たちのところへ来て心配してくれるけど、桃子の涙は止まりそうにない。
曲の終盤には白石さんと高山さんが来てくれて桃子にカメラを見させようとしてくれたけどうまく行かずに、桃子にすごい力で引っ張られてバックステージに来てしまった。
ダブルアンコールで手を振ることもせずに泣き続けた桃子とそんな桃子に腕を組まれて桃子の顔を覗き込んでた私の2人が、いい意味でも悪い意味でも注目を集めてしまっていたことを知るのはもう少し後の話し。
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作者名:yurima | 作成日時:2024年2月6日 23時