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いつからか緊張しなくなってしまったオーディション。
だけど今回のオーディションは話が違う。今の私は知名度が高いだけの一般人なのだ。
全体的にオーディション慣れしてない子が多いこのオーディションの中でも一際目を引く子がいる。なんでって聞かれたら、ずっと泣いてるからとしか言いようがない。
ずっと泣いてる。たぶん同い年ぐらいの子。
でもきっとあの子は合格する。
審査のとき、隣で見ててびっくりするほど目を奪われた。釘付けになってしまった。ぴーぴー泣いてるのに歌とダンスをするとなると輝いてた。特段上手という訳でもないのに、何故か目を引く。きっとこういう人をアイドルっていうんだと思う。
名前は大園桃子。
そのツヤツヤの黒髪は私には無いものすぎて羨ましい。私の髪の毛は生まれた時から茶色がかっててふわふわした髪質。
「私小川A。よろしくね」
最終審査の待ち時間。ここまでは話しかけられた時にしか話さなかったけど、この人は自分から話しかけたくなった。
桃子「あ、大園桃子です。よろしくお願いします」
この子と私は受かるだろう。
訛りがあるってことはどこか地方の出身で、よく泣くのにパフォーマンスをすれば目を引かれるこの子と
超人気子役という看板を10年間背負ってある日突然引退した私。
この2人を乃木坂46運営が手放すわけが無い。
なんて自信ありげなことを考えてないと足の震えがおさまらない。
久しぶりのオーディションでありえないほど緊張しているのに、ここにいる人たちは私を見るたびにあ！って顔をする。私のことを知ってる人の顔をする。
SHOWROOM審査では顔出しせずにラジオ配信にしてもらったけど、コメントで小川Aの声に似てるって書かれてた。
芸能界を引退したはずの小川Aが乃木坂のオーディションにいたけど落ちたっぽいなんてネットにあげられたら一生の恥になる。
落ちるわけにいかない。ここで私は残るんだ。
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作者名：yurima | 作成日時：2024年2月6日 23時
