どうやら常識が伝わらないらしい～さぁん～ (ページ5)

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簪とはページ5

「おい、出かけるぞ」

「は、はい」

　久しぶりの不死川さんからのお誘い、多分仕事だと思うので動きやすい格好に着替えようとしたら、止められた。

「少し街に出るだけだからそのままでいい」

　珍しいこともあるものだと思いながらも、そのまま着物を着て出かけた。不死川さんも、隊服ではなく私服の着物だ。

　ちなみに胸元は相変わらず空いている。

「お前は、何色がすきとかあるか？」

「え、そうですね。白とか黒が結構好きですよ」

　好きというか、揃えたら綺麗に見えるから好んで使っているというだけ。

「そうか」

　そういうと、彼は綺麗な一面ガラスのいかにもセレブな匂いのするお店に入った。中はレトロな感じで、主に売っている物は、簪や扇子といった小物だ。

　ふと、値札が目に入る。驚愕した。円なのだ、銭ではなく。高級もいいところだ！

「見てろ、いいのがあれば俺に言え｣

　と言われたので、ぽつんと一人で周りを見ることに。すると、店員さんに声をかけられた。

「奥様の髪色なら、こちらの簪が良くお似合いですよ。旦那様の髪色と同じものです」

　奥様？旦那様？ふと、簪の色を見て慌てる、私と彼が夫婦と思われてるのか！

「違います。彼は連れでして」

「もしかして、花嫁簪をお探しでしたか？それなら！」

　と興奮して私に色々と簪を勧めてくれる店員さん。どれも普通の人なら泡を吹くレベルで高級なものだ。

「悪ぃが、連れはつれてくぞォ」

　そういうと不死川さんに引っ張られ、店員さんから開放された。そのまま外に出ると、紙袋を渡された。

「これは？」

「好きなんだろ？黒色」

　開けると、黄色と黒の鼈甲簪が。しかも、花模様のコーティングまでされている。絶対に高いやつ。

「こんなのいただけません！」

「うるせぇ！黙って受け取ってろォ！」

　そういう彼の耳は、少し赤かった。そこで、これは女性慣れしてない彼なりの優しさなのだと察した。

　ここで断るのは、逆に失礼ということだ。

「……ありがとうございます。一生大切にしますね」

　そう言って、私は懐にしまった。彼が自分の髪色である白の簪を買えなかったのは、また別の話。