月を見つけて【ワンパンマン】

ー台風ー ページ20

「遅れてきたんですから、今日は譲ってください」

　どうやら童帝くんは余程私の体質に興味があるらしく、1歩も譲ろうとしない。が、ゾンビマンさんもここで譲るような人ではない。

「そもそも俺が約束をしていたんだ」

　確かにそうだ。たぶん、私が片方を選ぶと最悪の空気というものが出来てしまう。ので、あえて私は黙っておこう。そう思い、私は死んだ魚のように黙った。

「じゃあAさんに選んでもらいましょ？僕か、ゾンビマンさんか」

「いいだろう。おいA、俺と童帝……どっちと遊びたい」

　こんな取り合い嫌だ。せめて人肌同士の争いにしてもらいたい。片方は冷たいし、片方は機械だし……てか、結局私が選ばなくては行けないのか。

「じゃあ、童帝くん」

　と、名前を呼ぶとすごくわかりやすく笑ってくれた。きっとこの場限りだが、私が彼を優先した事を嬉しく思っているのだろう。

「また、今度二人っきりで会いましょうか」

　私が続けると、今度はゾンビマンさんが嬉しそうに笑った。だが、童帝くんも嬉しそう。もう、私は疲れたよ。

「じゃあ、連絡先交換しよ！」

「はいはい」

　そういうと、ようやく機械がランドセルの中に仕舞われた。怖かった、あのまま捻り殺されるのではないかと思った。というより、思っていた。

「それじゃあ、また」

　連絡先を交換すると、彼はそのまま去っていった。ほんと、台風というか、なんというか……慌ただしい子だったな。

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