21.特別 ページ21
松本くんはなんでも受け入れてくれそうな、
そんな予感がした。
今まで誰にも話せなかったことなのに、
不思議と松本くんには話せた。
こんなに重い話をしたら大抵の人は驚いて、気を遣ってくれる。
私は人に気を使わせるのが嫌で、話ができなかった。
でも松本くんは、
「話してくれてありがとう」
と言ってくれた。
そんな言葉を言ってくれるとは思わず、
涙が出そうになる。
…だめだ。
泣いちゃ、
そう思ってグッと耐えていると、
目の前の松本くんが両手を広げて
「ん」
と言いながらこちらを見ている。
「え」
驚いて声を出すと、
私の反応を見た松本くんが顔を赤くして目を逸らした。
「…あ、悪い」
「泣きそうだったからつい…」
松本くんの不器用ながらの優しさに触れ、
我慢していた涙が溢れそうだった。
お母さんが病気になってから、
私がしっかりしなくてはという思いが強くなり、
誰の前でも泣くことができなかった。
でも、この人にならー・・・
私が目を逸らしている松本くんをよそに、
ギュッと松本くんを抱きしめた。
あまりの勢いに松本くんは小さな声で「うおっ」と言い、驚きつつも、ゆっくりと私の背中に手を回してくれた。
「…私たち付き合ってないのにね？」
イタズラっぽくそういうと、
松本くんは
「今はいいだろ…」
と言ってもう少し強く抱きしめてくれた。
…松本くん、
私たちの関係ってなんだろうね。
公園でたまたま出会った日から、
何度もこうして会っているけど、
松本くんが私を見る目が、
付き合っていた時の川田さんを見ていたような優しい表情で私を見るから…
勘違いしそうになるの。
私の笑顔を見て、
ホッとしたように微笑む顔が、
「…松本くんずるいなあ…」
そう呟きながら、
静かに松本くんの胸で泣いた。
松本くんは私の張り詰めた心を溶かしてくれる唯一の存在だった。
「…ずるいってなんだよ」
「誰にでもこういうことしてるの？」
聞くのは少し怖かったけれど、
どうして確かめたくて聞いてしまった。
松本くんが口を開くまで、すごく長く感じた。
いつもより鼓動が大きく聞こえる。
松本くんに聞こえないか心配になる程だった。
ドキドキしながら待っていると、
松本くんがゆっくりと声を発した。
「…誰にでもするわけないだろ」
そう言った松本くんはさらに私を抱きしめる手を強めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 31人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
usa(プロフ) - Lyraさん» Lyraさん！コメントありがとうございます！全然気づいていませんでした😣💦すいません！今すぐ見させてもらいます❣️この作品も読んでいただいてありがとうございます！Lyraさんビックラブです🥺💗 (10月9日 21時) (
レス) id: d85cd154fb (このIDを非表示/違反報告)
Lyra(プロフ) - メッセージを送ったのですが、もしかしたら気づいていらっしゃらないのかも？って思ったのでこちらにコメントしました😉読んで下さっていたらごめんなさい🙇♂️36.の松本の照れや笑顔がすごく想像出来てほっこりしました💓 (10月8日 23時) (レス) id: 798ba1e857 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：usa | 作成日時：2023年8月23日 17時
