17.感情 ページ17
Aさんを抱きしめながら、ゆっくりと口を開く。
「無理に笑う必要なんかない」
「泣きたい時は泣けばいい」
感情をコントロールする必要なんかない。
感情は時に自分を助ける1つの手段になると思う。
涙が出てくるってことは、それなりの理由がある。
だからそれを我慢する必要なんかない。
そんなことを考えていたら、
無意識に腕に力が入って
Aさんを強く抱きしめていた。
「松本くん…？」
Aさんの声にようやくハッとなり、我に帰る。
冷静に考えれば、付き合ってもいない女子を抱きしめるなんて正気の沙汰ではない。
俺は冷静になり、慌ててAさんから手を離そうとした。
その瞬間、Aさんは後ろから抱きしめている俺の腕をキュッと握り返した。
「…ありがとう」
消え入りそうな声でAさんはそう呟いた。
いつも見えていたAさんの正反対の姿に、
守りたい、と漠然とした想いを抱いた。
ーーー
Aさんが落ち着いてから、
ベンチに並んで座る。
「…飲むか？さっき買ったリンゴジュース」
俺はそう言いながら、リュックからリンゴジュースを取り出してAさんに渡した。
「…ありがとう」
Aさんはそう言いながら俺の渡したリンゴジュースを受け取り、嬉しそうにそれを眺めていた。
…リンゴジュースが好きなのか？
次からリンゴジュースを買ってから公園にくるか？
なんとなく次もAさんがここにいそうな気がして、無意識に次に来ることを想定する。
「…松本くん、優しいね」
そう言ってAさんは俺に笑顔を向けた。
いつもの笑顔に、ホッと安心し、肩を撫で下ろす。
なぜ先ほど泣いていたのか聞きたかったが、
そんなにすぐに人に心開けないだろう、と聞くのをやめた。
「松本くんがモテる理由がわかるなあ」
Aさんの一言に、ギョッと驚いてAさんを見る。
「俺はモテないぞ？」
「モテるよ〜」
「だってなんの見返りもなく人を助けられるでしょう？」
「綺麗な眉毛に、綺麗な目！」
「バスケ上手だし、人望暑いし…」
次々と出てくるエピソードに俺は唖然とAさんを見つめる。
Aさんも俺が何も言葉を発しないことに気づいたのか、顔を真っ赤にし、目を丸くしてこちらを見る。
「ご、ごめん…話しすぎた」
「いや、そんなに褒めてもらえて嬉しいよ」
その後もなんとなく変な空気が二人に付き纏っていた。…気がする。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 31人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
usa(プロフ) - Lyraさん» Lyraさん！コメントありがとうございます！全然気づいていませんでした😣💦すいません！今すぐ見させてもらいます❣️この作品も読んでいただいてありがとうございます！Lyraさんビックラブです🥺💗 (10月9日 21時) (
レス) id: d85cd154fb (このIDを非表示/違反報告)
Lyra(プロフ) - メッセージを送ったのですが、もしかしたら気づいていらっしゃらないのかも？って思ったのでこちらにコメントしました😉読んで下さっていたらごめんなさい🙇♂️36.の松本の照れや笑顔がすごく想像出来てほっこりしました💓 (10月8日 23時) (レス) id: 798ba1e857 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：usa | 作成日時：2023年8月23日 17時
