嫌いな日9 ページ9
「…ごめん」
このごめんは、いい弟じゃなくてって意味。
でもそんなこと姉ちゃんに言ったら、いい弟ってなんだよ。って笑われると思う。
家に帰って竜胆に姉ちゃんの手当てをさせる。
やりすぎるくらいにやれって。
久しぶりに3人で入るベッドは狭く感じて、でもそれが心地よかった。
ずっと求めていたものが腕の中にある。
それを夢じゃないと感じたくて、抱きしめる腕に力を入れて、姉ちゃんの顔にキスをした。
額、右瞼、左瞼、右頬、左頬、右耳、左耳
『蘭くすぐったい』
その声だ。
「俺の名前呼んで」
そう言えばもう一度呼ばれる名前。
「もっと」
名前を呼ばれるたびに満たされていく。
鼻の奥がツンとして力一杯抱きしめた。
そして、その日の夜に佐野真一郎が死んだ。
俺のところに姉ちゃんが来たから、死んだ。
正直、勝ったと思った。
ザマァみろと。
でも、その日を境に姉ちゃんが壊れた。
タバコも変えて、酒の量も増えた。
痩せ細っていった。
見るのも辛いほど。
俺のせいで。
勝ってなどいなかった。
それどころか、勝ち逃げまでされて。
「……ダセェな」
先程出かけてくると出ていった姉ちゃんの後を追うように外へ出る。
「兄ちゃんどこ行くの」
「んー
文句言うついでに墓参り」
もう俺のせいで。なんて思うのはやめだ。
姉ちゃんは俺らのもんだ。
守りたかったか？
笑う顔も見てたかっただろ。
大人になってお前の隣を歩く姉ちゃんはさぞかし綺麗だっただろう。
それも全部俺らがこの先見てやるよ。
んで、年くって死んだら地獄から叫んでやる。
ザマァみろってな。
あれから色々あったけど、今も変わらず月を見上げる姉ちゃんの後ろ姿を見つめる。
「姉ちゃん、帰ろう
竜胆が待ってる
スーツに血ついてんじゃん」
死体の前で、まだ煙の上がる銃を片手に空を見上げている姉ちゃんを後ろから抱きしめた。
羽衣なんて初めからなかったらいいのに。
落ちて落ちて、月に帰れないかぐや姫と地獄でも共に。
羽衣伝説。もう一つのかぐや姫の話。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 697人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉兎(プロフ) - 朝パンさん» お久しぶりです😂😂もちろん覚えてますよ！！ めちゃくちゃ読んでくれてる！！✨✨嬉しさ極まってます！！ありがとうございます🥰頑張ります💪 (8月31日 11時) (
レス) id: 51ccdf4ac7 (このIDを非表示/違反報告)
朝パン(プロフ) - お久しぶりです!!覚えてますか？この20回振ったあの子は灰谷姉でしたシリーズと喧嘩するほどシリーズそしてちょっとおかしな君の金銭感覚シリーズを軽く8回程読み返しまくってる朝はパンよりご飯派です!玉兎様の作品はどれも傑作でもう大好きですこれからもFIGHTです!! (8月17日 2時) (レス) id: 90a0b3c2ac (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - つかささん» ありがとうございます！！そう言っていただけると舞い上がります😂 頑張ります✨✨ (2022年8月27日 12時) (レス) id: 29d9966584 (このIDを非表示/違反報告)
つかさ(プロフ) - 玉兎さんの作品めっちゃ面白いです！！玉兎さんのペースで全然いいので更新頑張ってください！！ (2022年8月27日 7時) (レス) id: d3e06b901c (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - 雪兎さん» いえいえそんなお気になさらず！ 読んでいただけるだけで幸せです🥰さらにコメントもしてくださって舞い上がります😊 お時間のある時にゆっくり目を通してください♡✨ (2022年8月25日 16時) (レス) id: 29d9966584 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：玉兎
| 作成日時：2022年7月22日 13時
