きっかけはカラフルな、、、 8

ブラウンゴールド ページ3

さっきのあの涙、、、苦しそうに顔を歪める淳太、、、一人、真夜中の暗い歩道。



置き去りにしてしまったことを後悔する。



家まで送ればよかった。



男だし襲われることを心配するというよりは、心が心配。



オレの横を終電に向かい走る乗客達がいなくなった。



言っていたように、コンビニ寄って家帰るならそれはそれでいい。



『電車間に合った〜。ギリセーフ！』



近くにはオールできるカラオケ屋も漫画喫茶もある。



検索した。



さっき来た道を戻り、ビルの陰から淳太と別れた方を覗く。



ほら、、、もう、、、まだおるやんけ。



『間に合ってよかった。』



それだけが送られてきた。



数メール歩いてベンチに腰を掛けた。



帰らへん気？



スマホの明かりがぼんやり淳太の顔を照らしている。



10分、、、20分、、、その場を動かない。



時々、大声で肩を組んで歩く酔っぱらいや、ヒールの音を鳴らして早足で帰り道を急ぐお姉さんが通る。



それでも、淳太はそのまま。



秋物のジャケットでは少し肌寒く感じる。



早く帰らんと風邪引く、、、動く気配がないまま30分が過ぎた。



淳太の番号をタップする。



淳太、なんて言うか、、、オレはどう言えばいいか、、、。



「、、、もしもし。」



明るくも暗くもない、普通の声。



ただし、丸見えやからな、、、携帯持つ手とは逆の手で目元を拭っている。



「わっ！もう寝てるかと思った！」



オレはめちゃくちゃ明るく返す。



「じゃあ何で電話するんよ。」



初めての電話。



耳から脳に直接淳太の声が届く気がして震えた。



「いや〜、さっきバタバタ帰ってしまったからさ。

ほら、淳太なんか言いかけてたやん？」



実際にはオレは逃げたわけやけど、淳太は何か言いたかったことあるん違う？



文句なり、冗談なり、、、あと5分でもあれば言えた？



聞いてあげたかったから、、、けど、携帯から聞こえるのは僅かに息づかいのみ。



聞いてるか尋ねても、「さっき言おうとしてたことはさ、、、。」と言ったまま黙る。



そうなったらオレも、淳太が話せるまで待つよ。

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