きっかけはカラフルな、、、 1

ペールクロッカス ページ45

赤



秋。



佐田さんは、相変わらず時々誘ってくれる。



けど、アリスちゃんのいない店に行くのは違う。



オレはアリスちゃんに会いたいんであって、あの店に行きたいわけじゃない。



佐田さんには、「アリスちゃん、いませんでしたよね？」って何度か聞いた。



その度に返事は同じ。



「辞めてから見てない。」



っていうことと、



「お前、何をしたの？」



って。



今回もハロウィンナイトに参加したという佐田さんに尋ねた。



答えは同じ。



「あ、でも、自転車で通ってたらしいからさ、案外近くに住んでんじゃない？」



佐田さんはそう言うけどさ、都内の大学だけでもかなりあるし。



生活費稼いでるって言っていたからさ、電車代節約のために少し遠くても自転車で通うって可能性もあるやん？



ほら、、、全然手掛かりなんてない。



明日からの学園祭は、以前より規模を小さくしつつも今年は開催するということで、キャンパス全体が浮き足立っている。



いや、言葉が悪いな、、、活気に満ちている。



サークルや部活に所属していないオレは、まぁいわば学祭自体部外者のようなもん。



普段通り授業受けて、バイトに行くのみ。



看板などを設置する学生達の間をゼミのメンバーと歩いている時やった。



「ペン、落としましたよ。」



オレの後ろを歩いていたヤツが誰かに声をかけた。



「え？、、、ごめんなさい。ありがとうございます。」



この声、、、！？



後ろを振り返り、その声の主を見る。



顔を、、、。



黒髪、黒縁眼鏡、真面目そうな服装、ニット帽とマスクの間から見える目、、、。



見逃さへんし。



一瞬だけ目が合い、直ぐに逸らしたやろ。



ペコっとお辞儀をして歩いていく。



学祭当日なら他の大学の学生ってことも考えられる。



けど、その荷物からして、同じ大学。絶対。



「なぁ、今の人、名前知ってる？」



一緒にいる友達に聞く。



「さぁ、、、知らない。」



「見たことあるかなぁ？」



逃したくない。



このチャンスを、、、見つけられた奇跡を、、、。



「ごめん。オレ、用事思い出した。じゃあな。」



それだけ言うて駆け出した。

ペールクロッカス→←ペールクロッカス

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す