きっかけはカラフルな、、、 1

ペールクロッカス ページ28

「世の中、いろんな人がおるって、、、。

重岡さん、今日、佐田さんに無理矢理連れてこられただけやろ？

もう二度と来んほうがええよ。

オレの時給、2500円。

重岡さんが飲んでるお酒、ただの安っすいウイスキーのハイボール、一杯1000円。ぼったくりもええとこ。

普通にその辺の居酒屋で飲み放題で飲んでる方が大学生にはいいって。」



それだけ言うて席を立った。



社長室で社長に大袈裟に言うて、勘弁してもらう。



「佐田さんと一緒のお兄さんに、『女装して酒注ぐだけか？』みたいな言い方されたんです。

オレ、前もそんな風にホテル誘われたことがあって、気持ち悪って、、、。

だから、今日はもう帰っていいですか？

見てください、これ。鳥肌！！

無理です！！」



社長はオレがただのバイトとしてこんな格好をしていることを知ってくれている。



この店の従業員の心から女の子っていう人ばかり。



オレが異質。



「わかった、わかった。

はい。とりあえず、1時間分のボーナスプラスアルファあげるから。

またよろしく頼むよ。そんなこと言わずにさ。」



店長の財布から受け取ったお札3枚をポケットにしまって更衣室へ行く。



「お疲れさまでした。」



化粧落として着替える。



ウィッグも、、、鏡の中のオレは金髪女子から黒髪の男へ。



嫌な思いはした。



けど、これで1週間は暮らせる。



こんなもんや、人生なんて。お客さんに買ってもらった自転車に乗って夜の街へと漕ぎ出した。



大学ではぼちぼち対面授業が始まった。



周りでは、やっと始まった学生生活に浮かれる奴らばかり。



サークルだの合コンだの。



マスクしているから余計に探り探りなんやと思う。



オレはというと、イヤホン付けて他人を拒絶してしまう。



これでも、高校生のときはダンス部の部長してたり、学年の中でモテ男何位とか言われたりしてた。告白されたりもしてたしさ。



しゃあないやん、、、今は、自分の夢のため。将来のため。



店長にもらった千円札は財布の中。



学食にでも行こう。



日替わりA定食をトレーに乗せて空いている席を探す。



一人分やから、まぁすぐに見つかる。



窓側、中庭の青々とした芝生が見える席が一つ空いていた。



「いただきます。」



マスクの中で小さく呟き、割り箸を割る。



味噌汁が美味い。



後ろの席で何人かのグループがはしゃいでいる、、、のは無視だ。

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