思い出【gr】 ページ4
現在いるのは城下。それらしく栄えていて、人口も多い。
そこで私の隣に立ち笑いかけてくるこの国の王子に、適当に相槌をうっていた。不幸の元凶であるこの王子を殴れる方法があるなら大金を払ってでも買いたい程私の心は荒んでいた。
ほんの数週間前まで隣にいたのは大好きな人だった。
一人で外出した時に攫われるようなヘマしてなければ、今だってそうだっただろう。
弱い自分に腹が立つ。それと同じぐらい一目惚れしたからと部下を使って無理やり私をこの国に連れてきたたった今横にいるこいつに腹が立つ。
連れてこられた日から恋人同士でするようなことを私に要求しては、拒否されて殴り罵り脅すことを繰り返すのだ。
受け入れた方が賢いのかもしれない。
けれどこんな奴に媚びて心を売るぐらいなら死んだ方がマシだから、どれだけ殴られても私は抵抗をやめないと決めていた。
城下に出てから3時間たった現在。日も傾き、隣のやつも満足したのだろう、城へ帰ることになった。
外出することも帰ることも、全部私の意見なんて聞かない。
この自己中王子は一体どんな教育受けてきたんだ。いつだって自分が満たされることしか考えていない。
「今日は楽しかったか？
久しぶりの外出だろう。城下というのも悪くないな」
何が楽しかったか？だ。
昨日あれだけお前に殴られて疲れきっている私を、城下の人に見せつけたいからかしらないけど振り回しておいて。
「ええ、一緒にいるのがあなたじゃなければ」
腹が立ったから精一杯の笑顔でいってやると、彼は途端に私を城内まで引きずり殴りかかってきた。
そうして30分ほど殴って満足したあと、私を牢に閉じ込めた。こんなのはいつものパターンだ。非常に遺憾ではあるがもう慣れてしまった。
「そこでしばらく反省していろ。分かったか」
と最後にいってあいつは去っていく。やっと静かになった。少し、静かすぎるけど。
ぐったりと地面に横たわりながら、考えるのはいつも彼らとグルッペンのこと。
どんな思い出も、会話も
全て過去のこととなってしまった。
愛しそうに名前を呼ぶのも、嬉しそうに勝利を語るのも全部、変わりゆく生活の中で突然置いていかれることがあるのを知らなかった私はなんて馬鹿なんだろう。
貴方のいない思い出が増えるのが怖い。
忘れていきたくなんかない。
慣れていきたくない。
また明日を一緒に過ごしたい。
「助けて。」
小さなその声は虚しく牢に響いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 51人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
透水(プロフ) - 孔雀石さん» 畏まりました！遅筆なので時間かかってしまうかもしれませんが気長にお待ち頂ければ幸いです…！こちらこそありがとうございます (2019年11月29日 9時) (
レス) id: 2d62d7baf3 (このIDを非表示/違反報告)
孔雀石(プロフ) - 透水さん» 連投で申し訳ございません。どちらも好きでたまらないのですが、2個目の方が特に、ですね...!ぜひ気が向いた時にでもお願いしたいです。ありがとうございます! (2019年11月29日 0時) (レス) id: efda21e4ed (このIDを非表示/違反報告)
透水(プロフ) - 孔雀石さん» 初めまして、コメントありがとうございます。そう言っていただけると本当に嬉しいです…!続きとはciさんの2つ目の話の方でしょうか…?リクエスト貰えるのは嬉しいので是非御気軽にどうぞ！拙い文章ですがこれからもどうぞよろしくお願いします (2019年11月28日 13時) (レス) id: 2d62d7baf3 (このIDを非表示/違反報告)
孔雀石(プロフ) - 初めまして。コメント失礼します。すごいどれも素敵なお話で心臓がギュッてなりました...特に、推しということもありciさんのお話がとても好き...!主が可哀想なお話が好きなのでぜひ続きをリクエストしたいほど...!これからも頑張ってください。応援しています! (2019年11月28日 0時) (レス) id: efda21e4ed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：透水 | 作者ホームページ：http://around-the-clock
作成日時：2019年7月22日 1時
