どうか私の声が届きませんように【tn】 ページ13
門番に御者が私の身分やら要件やら色々説明していた。それをぼうっと見ながらもう彼と会うのも四回目になるのか、と考える。
彼とはトントンという、政略結婚の相手だ。
初めは親に決められた結婚なんて最悪だと思ってたが、実際会って話したらいつの間にか彼に惹かれていた。
何をしても丁寧な動作、優しいエスコート、穏やかな笑顔など、彼のすること一つ一つに胸がキュンとして
いつしか次に会える日が、他の何よりも楽しみになっていた
けれど私は最初から、これは彼も望んでないお見合いであることを知っていた。だから当然こんな茶番劇がいつか終わりを迎えることだって、分かっている。
でももう少しだけ、この空間に甘えていたいから
私はそれに気づかないふりをしている。
色々考えるうち馬車は門をくぐっていて、開いた扉の先に立つトントンさんは優しく手を差し伸べ私をエスコートする。そして来客室まで私を案内し柔らかなソファに座らせ、彼自身はその正面に座った。
｢お話があるんです｣
召使いが紅茶とお菓子を私達に出してすぐ、彼が気まずそうに言った。それに胸騒ぎがしたが、そんな理由で会話を止められるはずもなく笑顔で答える。
「どうしました？」
「Aさんには好きな人はいますか」
そう言って彼は私を見つめた。
好きな人、と言われてうかんだのは目の前にいる彼だ。是か非か彼はそんなこと知らないが
｢えぇ｣
「僕にも好きな人がいるんです」
その言葉で最初の悪い予感が気の所為でないことを確信した。いつかこうなるのはわかっていたのに私は今更、これ以上聞きたくない、いわないでくれ、と必死に祈った。
けれどその思いは届かず、彼は続きを話した
「Aさんと会って、その気持ちの大きさに気づいたんです。
だからすみません。
お互いのため、このお見合いはなかったことにしましょう」
真っ直ぐに私を見つめるトントンさん。そんな顔をされたら嫌だと言えるわけが無い。
ここで自分の気持ちを言える程正直な人間だったらどれだけよかったか。
そんな愚かな空想ごと私は全ての思いを飲み込むしかなかった。
「…そうですね」
「それでは今日はこの辺で」
「はい」
彼は立ち上がり扉に向かっていく。ちゃんと彼と話すのはこれで最後になるのだろう。
だって彼の好きな人は私じゃないのだから。仕方ないなんて、あぁどうして
「私の好きな人は貴方なのに」
どうか零れてしまった私の声が、貴方に届きませんように
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透水(プロフ) - 孔雀石さん» 畏まりました！遅筆なので時間かかってしまうかもしれませんが気長にお待ち頂ければ幸いです…！こちらこそありがとうございます (2019年11月29日 9時) (
レス) id: 2d62d7baf3 (このIDを非表示/違反報告)
孔雀石(プロフ) - 透水さん» 連投で申し訳ございません。どちらも好きでたまらないのですが、2個目の方が特に、ですね...!ぜひ気が向いた時にでもお願いしたいです。ありがとうございます! (2019年11月29日 0時) (レス) id: efda21e4ed (このIDを非表示/違反報告)
透水(プロフ) - 孔雀石さん» 初めまして、コメントありがとうございます。そう言っていただけると本当に嬉しいです…!続きとはciさんの2つ目の話の方でしょうか…?リクエスト貰えるのは嬉しいので是非御気軽にどうぞ！拙い文章ですがこれからもどうぞよろしくお願いします (2019年11月28日 13時) (レス) id: 2d62d7baf3 (このIDを非表示/違反報告)
孔雀石(プロフ) - 初めまして。コメント失礼します。すごいどれも素敵なお話で心臓がギュッてなりました...特に、推しということもありciさんのお話がとても好き...!主が可哀想なお話が好きなのでぜひ続きをリクエストしたいほど...!これからも頑張ってください。応援しています! (2019年11月28日 0時) (レス) id: efda21e4ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：透水 | 作者ホームページ：http://around-the-clock
作成日時：2019年7月22日 1時
