【刀剣乱舞×文豪ストレイドッグス】 狂騒華櫻

仮定と可能性 >> 【第拾陸話】 ページ22

「あるじさまのせいしよりも『どこにきえたか』のほうがじゅうようです。
ぼくたちのてがとどかないところにあるじさまがきえたならそれこそ、いつかしんでしまうかもしれない。

ぶじだからといって『かくしょう』はありません」

鋭く、赤い眼をくるり。と回して今剣は三日月を見た。
幼い姿だが彼も又古参の【三条】。神力は高い方だ。

小天狗の彼も長い歴史を見守り、古い陰陽師や神主等を見て来た。
その時代で培われて来た『知識』と付喪神となった身に巡る神力の『格』｡

二つを多く持つ彼にしたら、主が生きて居る事は直ぐに判る。
事実や根拠を並べる前に躯の奥。自分の心が『生きて居る』と云う｡

彼――今剣にとって先程迄の三日月の話は唯の前振りなのだ。

「ふむ……そうだな。今剣が云う通りゲートを越えた主が『辿り着いた場所』は非常に重要だ。神社に居なかったとすると……推定出来る可能性は三つ」

細くしなやかな指を立てて三日月は云う。

「壱 俺達が出陣して来た時代の何処か。……之は一番有り得そうな可能性だな

弍 政府。之は……可能性としては最も低いと思う｡

参 俺達が知らない場所。今出る可能性は此の三つだけだ」

「えっ……壱だったら大変だけど虱潰しに探して行けば良いんじゃない？」

少し前傾姿勢で加州が云う。慥かに自分達が出陣した時代は十を超える｡
それを辿ると成ると『その時代の土地』で探さなければならない｡

時代を跨げば遡行軍と対峙する。大規模に探す程敵は増え、その敵を倒し乍ら主を探すとなると膨大な作業が必要だ。

然し、

「『一番有り得そう』な話だが有り得ないな。何処かの時代に着いたのなら主の霊力がこんなに薄まる筈が無い。それに、何処かの時代だったら三日月達がゲートを使った時に判る筈だ」

『五条』の名を持つ、歴史ある三条には劣るがそれでも他の刀剣男士達よりは神力の強い鶴丸が加州の話を止めた。

「嗚呼。何処か時代ならば俺達が気付く筈だ。よって壱の可能性は無い。
次の弍 政府。之は……」

「有り得ないな」と大広間に居る全刀剣男士が思う。

何故なら政府は彼等に楯突かないから。
ゲートの行き先を勝手に変える(こんなこと)をした事がバレたら刀剣男士達の逆鱗に触れるのは勿論､『自分達が遡行軍に襲わせました』と自ら暴露して居る様なものだ。

壱と弍は無い。それならば……可能性が有るのは？

三日月は視線を伏せ、最後の可能性を云う。

「そして最後。

参……俺達が知らない場所」

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