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10等分 ページ46




「Aはこれからどうするの?」

「私?…私は、そうだなぁ…」

「良かったらさ、俺らと一緒に来ないか?」


アリスが優しい笑顔を浮かべる。
まるで主人公だ。ウサギも嫌な顔をひとつせずに「それがいいわ」と同意した。


「…ありがたいお言葉だけど、遠慮しとくね」

「…どうして?」

「待ちたい人がいるの。」


生きて帰ると約束したあの人に。
ウサギは少しばかり驚いた顔をした後、ふぅとため息をついて「そうじゃないかと思ったわ」と言った。
自分達よりチシヤをとったのが悔しいのか、少しだけ眉を上げて。


「A。」

「うん?」

「ケーキがワンホールあったとする。」


唐突な例え話に「え?」と声を漏らす。
ウサギは「いいから聞いて」と戸惑う私に言い尚も続けた。


「すっごくお腹を空かせた人が8人、そこに自分の大切な人もいる。…あなたならどうする?」

「…え、9等分して、大切な人も含めてみんなに配るかな」

「ふふ、そうじゃないかと思った、きっとアリスもそうする。…自分の分はどうするの?9等分したら無くなっちゃうじゃない。」

「あ、そっか」

「私はきっと10等分するわ。けれどきっと…。チシヤは、10等分したうちの9つを貴方にあげて、残った1つを自分が食べるわね。」


想像する。
…うん、きっとそう。
お腹を空かせた人達なんて興味も無しに。
クスリと微笑めば、「そういう所が好きなんでしょ」と笑う。


「私もアリスの、自己犠牲の強い優しさが好きなの。…きっとチシヤもそうなんでしょうね。貴方のそういう所に惹かれたのよ。」


こっそりと私に耳打ちをする。
…あ、ウサギ今、アリスの事を好きって初めて口にした。
嬉しそうにいたずらっ子のように言う彼女は気づいていないのかもしれないけれど。
私は微笑んで、こちらを不思議そうに伺っているアリスをちらりと見る。
そうだね、きっとアリスなら9等分しちゃうと思う。
けどねウサギ。
私もきっと、ウサギと同じように10等分しちゃうと思う。

別れのため、そして次に控えるゲームでの再会の為にアリスとウサギに手を振りながらふと思う。

10等分したうちの8つをお腹の空かせた人達に。
そして残りのふたつを、チシヤにあげたい。
きっとこれが、好きって事なんだろうな。

暗闇の中、少しだけ息をついて後ろを振り返る。
立ち止まっている暇なんか、時間なんかないから。
ふと立ち止まって月を見上げ、眦を下げた。


「綺麗だなぁ」


リサの亡骸を回収して埋めながら、私は囁く。
こんなに綺麗な月明かりの下なら、きっと寂しくは無いね、と。

生きる、そして帰る。→←生きていける



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みりん(プロフ) - ゆめさん» ゆめさんありがとうございます!長ったらしい小説家とは思いますが、ここまで読み進めていただいたことマキタにありがとうございます!ꈍ .̮ ꈍ メッセージの方でパスワードを送らせて頂きますね! (2023年4月13日 20時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 初めまして!みりんさんの作品全て読まさせて頂きました! どれもとても素敵な作品で、出会えた嬉しさでいっぱいです! これからも陰ながらですが、応援させて 頂きます!お時間のある時に0の方のパスワードを 教えていただけると幸いです! (2023年4月13日 16時) (レス) id: 23764cc589 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - はるさん» はるさん、嬉しいお言葉ありがとうございます…!(*ᴗˬᴗ) EP0のパスワードの方、メッセージにて送らせて頂きますね! (2023年4月12日 1時) (レス) @page42 id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - はじめまして!素敵な作品を拝見させていただきありがとうございます!文章力が素晴らしくて凄く感情移入しました( ꈍᴗꈍ) 宜しければEP0の方も拝見させて頂きたいです!お時間ある時によろしくお願いします! (2023年4月11日 18時) (レス) @page40 id: 18e6227b50 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - ありがとうございます!︎おふたりとも、メッセージの方にてパスワードを送らせて頂きますね!ここまで読んでくださり嬉しい限りです(^_^*) (2023年4月9日 22時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みりん | 作成日時:2023年3月21日 2時

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