カラス なぜ鳴くの ページ39
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「かぁらぁす、なぜ鳴くの〜、カラスはやぁ〜まぁ〜にぃ〜」
暖かい。
夏の茹だるような暑さじゃなくて、暖かい春の日差しのような。
可愛らしい歌声が聞こえて私は瞳を開く。
そこには折り鶴を作りながら無意識のように口をとがらせ、不格好なメロディを紡ぐ弟の姿。
…そうだ、私。
お母さんに頼まれてハルトの着替えを持っていっていたら、いつの間にか寝ちゃってたんだ…。
眠い目をこすりながら上半身を起こすと、ハルトは尚も気づかずに続ける。
私がピアノで簡単に弾いてみせてから、気に入ったのかずっと歌い続けている。
「可愛いななつのこがあるかーらーよー」
クスリと笑う。
肩には暖かい毛布がかかっていて、何だか少し寒くなってきた体の温度を上げてくれる。
窓が開いているからかな、閉めようかな。
そう思うのに、何故か体が動かない。
しょうがない、ハルトも私が起きたことに気がついていないみたいだし、もう一眠りしよう。
ベッドにもたれてウトリと目を閉じる。
…あぁ、何でだろう。暖かいはずなのに体の芯から冷めていく。
「僕ね、この歌好きなんだ。」
目を瞑ったまま聞こえるハルトの声。
私が起きてたのに気づいたのかな、だけどごめんね、ちょっとだけ寝させて。
「お姉ちゃんが舞台に立った時にね、真っ黒なドレスがキラキラ輝いてて…。みんな言ってたよ、カラスだ、って!」
…ごめんね、それは褒め言葉じゃないんだよ。
1位だけかっさらう強欲なカラス、
ボーシヤにただ従っていたナンバー2のカラス…。
「僕は大好きだよ。」
ありがとう。
…あれ、何だか目の前が真っ暗に…、
「だからね、まだこっち側にきちゃダメ」
こっち側…?
こっち側って…、
ダメ、眠たい。
ちょっとだけ寝かせて、ね?
底なし沼に落ちていく。
もう二度と這い上がっては行けないような深さまで。
…それでもいいか。
だってきっと、目覚めたらハルトは千羽鶴を完成させて、私は可愛いねって笑って…、_______
『ダメだよ、A』
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みりん(プロフ) - ゆめさん» ゆめさんありがとうございます!長ったらしい小説家とは思いますが、ここまで読み進めていただいたことマキタにありがとうございます!ꈍ .̮ ꈍ メッセージの方でパスワードを送らせて頂きますね! (2023年4月13日 20時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 初めまして!みりんさんの作品全て読まさせて頂きました! どれもとても素敵な作品で、出会えた嬉しさでいっぱいです! これからも陰ながらですが、応援させて 頂きます!お時間のある時に0の方のパスワードを 教えていただけると幸いです! (2023年4月13日 16時) (レス) id: 23764cc589 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - はるさん» はるさん、嬉しいお言葉ありがとうございます…!(*ᴗˬᴗ) EP0のパスワードの方、メッセージにて送らせて頂きますね! (2023年4月12日 1時) (レス) @page42 id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - はじめまして!素敵な作品を拝見させていただきありがとうございます!文章力が素晴らしくて凄く感情移入しました( ꈍᴗꈍ) 宜しければEP0の方も拝見させて頂きたいです!お時間ある時によろしくお願いします! (2023年4月11日 18時) (レス) @page40 id: 18e6227b50 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - ありがとうございます!︎おふたりとも、メッセージの方にてパスワードを送らせて頂きますね!ここまで読んでくださり嬉しい限りです(^_^*) (2023年4月9日 22時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みりん | 作成日時:2023年3月21日 2時