1ターン目 ページ28
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your side
誰かと合流できるかもしれないとは思っていた。
だけどまさか、この二人とは。
ウサギとアリスがコウタくんを庇う素振りを見せるのを微笑みながら見つめると、警戒心の強いウサギに睨まれる。
あぁ、そんな顔をしないで。
腰を曲げてコウタくんに話しかけ、彼の緊張を少しでもほぐそうとする。
Aか?
その問いかけにフードを外すことで答えた私は、驚愕と歓喜に染まるウサギとアリスの瞳を見て胸が暖かくなるのを感じた。
「取り敢えずここから逃げよう。」
鉄パイプが入り乱れる工場のような場所に移動する。
ここが今回の戦う場所か。
既に迫ってくる赤のボタンを遠目に見ながら、私は唇を開いた。
「上に行こう。」
「…上?初っ端からそんな所に登って体力使い果たす気か!」
私達に着いてきた男が叫ぶ。
ケンイチ、と言うらしい。フードを被り直した私は彼の大声にシッ、と人差し指を唇に当てる。
「何事も、最初は見通せる上に行くべきなの。…騙されたと思って着いてきて。」
アリスとウサギは私に習って上に行く。
逡巡する素振りを見せた男は一拍置いて、行くよ!と吐き捨てた。
だから、大きい声はダメだって言ってるのに。
上へ上へと登りながら、見下ろす景色に息を飲む。
…まずい。予想よりも呑まれるペースが早すぎる。
クイーンチームが少数精鋭の蟻のコロニーだとしたら、女王アリであるクイーンが一番厄介だ。
「間もなく 1ターン目が終了します。」
合成音声が鳴る。
ここからは私たちが攻めるターン、一気に取り返さなければ。
「捕まった奴らを取り返そう。向こうに捕まったヤツらが積極的にクイーンに協力するわけがない。」
理論上考えたらそうなのだけれど、その考え方にどこか引っ掛かりを覚える。
その通り、その通りだからこそ、クイーンがそれで終わらせるわけが無いと思ってしまう。
私が裏の裏をかきすぎなのか、それとも…。
「だな。良し行くぞ!」
マンバンの男が駆け出していく。
私もスニーカーの紐を縛り直しながら、久しぶりに参戦するスペードのゲームにふぅ、と息を零した。
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みりん(プロフ) - ゆめさん» ゆめさんありがとうございます!長ったらしい小説家とは思いますが、ここまで読み進めていただいたことマキタにありがとうございます!ꈍ .̮ ꈍ メッセージの方でパスワードを送らせて頂きますね! (2023年4月13日 20時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 初めまして!みりんさんの作品全て読まさせて頂きました! どれもとても素敵な作品で、出会えた嬉しさでいっぱいです! これからも陰ながらですが、応援させて 頂きます!お時間のある時に0の方のパスワードを 教えていただけると幸いです! (2023年4月13日 16時) (レス) id: 23764cc589 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - はるさん» はるさん、嬉しいお言葉ありがとうございます…!(*ᴗˬᴗ) EP0のパスワードの方、メッセージにて送らせて頂きますね! (2023年4月12日 1時) (レス) @page42 id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - はじめまして!素敵な作品を拝見させていただきありがとうございます!文章力が素晴らしくて凄く感情移入しました( ꈍᴗꈍ) 宜しければEP0の方も拝見させて頂きたいです!お時間ある時によろしくお願いします! (2023年4月11日 18時) (レス) @page40 id: 18e6227b50 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - ありがとうございます!︎おふたりとも、メッセージの方にてパスワードを送らせて頂きますね!ここまで読んでくださり嬉しい限りです(^_^*) (2023年4月9日 22時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みりん | 作成日時:2023年3月21日 2時