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「…チシヤ、次のゲームは離れて行動しよう」

「…そりゃまたなんで?」


形の良い眉がピクリと動いた。
…正直、私にだって分からない。けれど、彼が…ボーシヤが言うから。





______________________





【…ありがとう】

【キミも前を向いたからなぁ。そろそろイタズラはやめようか。】


爆発を免れた後。
独房でへたり込む私に聞こえるのは彼の幻聴。
私自身が作り出したボーシヤだって分かってるのに、縋りたくなってしまうのは何故?
震える手のひらを握りしめながら、何度も感謝を繰り返した。


【…次のゲームは彼と離れた方がいい。】

【なんで?】

【なんでもだ。】


果たして本当に信じていいものか。
そっか。小さくつぶやくと、ボーシヤが笑う声がした。
いつものような、鼻で笑う笑い方。


【…A】


顔を上げる。
窓ひとつない独房の前に、赤い羽織を着たボーシヤが、
死んだ時と何一つ変わらない服装でそこに立っていて。
ボーシヤ…?
目を見開いてそう問いかければ、彼が微笑むと同時に独房の外でチシヤの声がした。
…生きてた。彼、生きてたんだ。
ボーシヤからのプレゼントだと言うように手を広げた彼は、私に慈愛の瞳を向けて言った。


【希望を…夢を持つんだ、A】


拳を固めて演説するように語りかける様は、まるで高い所から見下ろしながら鼓舞するナンバーワンだ。
何だかおかしくなって微笑めば、そんな表情を見た彼が眉を下げる。
…すまなかった。
最後に優しい笑顔でそう言った幻聴が、聞こえた気がする。
その瞬間。
彼の姿が空気に溶けていく。
まるで最初から無かったみたいにサラサラと。
返事さえさせてくれずに逝くなんて。
最後までボーシヤらしいな、と微笑めば、外で彼の低い声が聞こえる。
…夢、か。
今の夢は、そうだなぁ。
チシヤと、この世界を出ること、かな。
新たに覚悟を決めた私はゆっくりと目を開き、独房のドアノブを開いた。

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みりん(プロフ) - ゆめさん» ゆめさんありがとうございます!長ったらしい小説家とは思いますが、ここまで読み進めていただいたことマキタにありがとうございます!ꈍ .̮ ꈍ メッセージの方でパスワードを送らせて頂きますね! (2023年4月13日 20時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 初めまして!みりんさんの作品全て読まさせて頂きました! どれもとても素敵な作品で、出会えた嬉しさでいっぱいです! これからも陰ながらですが、応援させて 頂きます!お時間のある時に0の方のパスワードを 教えていただけると幸いです! (2023年4月13日 16時) (レス) id: 23764cc589 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - はるさん» はるさん、嬉しいお言葉ありがとうございます…!(*ᴗˬᴗ) EP0のパスワードの方、メッセージにて送らせて頂きますね! (2023年4月12日 1時) (レス) @page42 id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - はじめまして!素敵な作品を拝見させていただきありがとうございます!文章力が素晴らしくて凄く感情移入しました( ꈍᴗꈍ) 宜しければEP0の方も拝見させて頂きたいです!お時間ある時によろしくお願いします! (2023年4月11日 18時) (レス) @page40 id: 18e6227b50 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - ありがとうございます!︎おふたりとも、メッセージの方にてパスワードを送らせて頂きますね!ここまで読んでくださり嬉しい限りです(^_^*) (2023年4月9日 22時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みりん | 作成日時:2023年3月21日 2時

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