呪いの匂いsideリンデル ページ5
食材の調達のために、町へ出た帰りだった。
トナカイを引いてドラゴンの国への帰路の森。
日が暮れた頃からだ。
長年共にいるトナカイたちがそわそわとしている。
「どうした」
落ち着かせようと頭を撫でてやるが、トナカイたちはさらに興奮する。
中には鳴き出すのまでいる。
こんなことは初めてだった。
何か危険が迫っているのか、それとも別の何かが起こっているのか。
『匂う、匂うぞ』
隣人たちもざわめきだす。
匂う？何が。
『ロビンだ、呪いだ』
『匂う、呪いの酷い匂い』
『近づいてくる。あっちだ』
『見に行ってみよう』
ふわりと飛んでいく隣人。
何も考えず、トナカイを置いてその後を追った。
月が隠れ、つまずかないようにゆっくり歩く。
隣人は導くように淡く光っていた。
『ここだ、ここだ』
『ロビンだけどロビンじゃない』
『可愛いことに変わりはない！』
『でも可哀想』
雲の絶え間から、月が姿を現す。
光が差し込んで隣人の言うロビンが照らされた。
その姿に息を飲む。
擦りきれてボロボロの黒い服からすらりと伸びる手足。
真っ黒な髪は長く、虚ろな青い瞳が見つめていた。
傷だらけの肌。
靴は履いていない。
「大丈夫か？」
踞る彼女に手を伸ばす。
その瞬間。
「お、おい！」
体の力が抜け、倒れかかってきた。
気を失っている。
ドロリと手が液体で濡れた。
血だ。
慌てて怪我を確認する。
「これは……………」
左腕に刻まれた、竜の刻印。
まだ真新しく、血が滲んでいる。
呪いの匂い。
トナカイが暴れるのもこれで説明がつく。
「しかし、どうしたものかの」
倒れた人を置き去りにする訳にもいかない。
従って連れて帰るしかない訳だが。
「…………あの時と同じ、か」
寒い夜に向かって呟けば、白い息が溶けていく。
夜の闇にあの者の姿を浮かべていた。
皆がピルム・ムーリアリスと呼ぶ茨の魔法使いの姿を。
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零斗(プロフ) - とても面白かったです！これからも更新頑張って下さい！ (2020年3月13日 14時) (
レス) id: 300461bf22 (このIDを非表示/違反報告)
有馬 - ものすごい面白いです！気長に更新待ってます！ (2019年3月24日 22時) (レス) id: c318382072 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翡翠 | 作成日時：2019年1月3日 11時
