飛ぶ ページ11
「………一応聞くね。何して遊ぶの？」
目を輝かせる小さな竜たちに向かって問う。
すると一匹が当たり前のように言った。
『あそこから飛び降りるのー！』
そう翼で指したのは………。
切り立った崖の上。
「いやいやいや、死ぬから」
『出来ないのー？』
「他の遊びにしよう」
『じゃあ鬼ごっこ！』
「…………どうやって？」
『こうやって捕まえるの！』
お手本を見せるように、竜がタックルしてきた。
突然のことに体が追い付かない。
『「あ」』
バッシャーン！！
一緒に水のなかへ落下。
白い泡が視界を埋め尽くした。
重い体は沈んでいく。
ゆっくりと、どこまでも。
ふと光輝く何かが通りすぎる。
『…………落ちたのか、迷い子よ』
竜だった。
水の中を優雅に泳ぐ、とても大きな竜。
その美しさに言葉を失う。
『哀れよな。そなたには光がない。生きようと思っていない。だから腹が空かない』
トンっとお腹をつつかれる。
竜は悲しそうな瞳で私を見つめていた。
何で、貴方がそんな顔をするんだ。
『誰だって悲しいだろう。生きる者が死を望むなんて』
泡が、口から溢れる。
そうか。
生きたいと思えないから、死にたいから。
私はこのまま沈んでいくのか。
何もしなければ、思うがままになる。
『それはまだ早い。迷い子の道は思っているよりも長いぞ』
竜がするりと私の下をくぐった。
そして私を背中に乗せ、水面へと上っていく。
「…………っ、！」
懸命に竜のたてがみを掴んだ。
振り落とされないように。
そして水の上を、飛ぶ。
世界が輝いていた。
太陽に照らされて、生きていた。
『それでいい。今は生きることに対して、執着できればいい』
「…………気持ちいいね。風に乗るのは」
竜は空を飛んだ。
翼もないのに、空を泳ぐように飛んだ。
初めて"生きている"と思えた瞬間だった。
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零斗(プロフ) - とても面白かったです！これからも更新頑張って下さい！ (2020年3月13日 14時) (
レス) id: 300461bf22 (このIDを非表示/違反報告)
有馬 - ものすごい面白いです！気長に更新待ってます！ (2019年3月24日 22時) (レス) id: c318382072 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翡翠 | 作成日時：2019年1月3日 11時
