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【episode 55】#Atsushi ページ7

「皆殺しだってよ」


「非道いな…」


僕は先程爆発のあった場所へ来ていた。

乱れた息を整わせながら爆発現場をただ見上げる。


周りにはたくさんの人が溢れかえっていた。


「軍警が言うにはマフィアの武闘派、その中でも凶暴な実働部隊"黒蜥蜴"って奴らの仕業だって」


「黒蜥蜴?」


「特殊部隊なみに戦闘術を持ち、しかも恐ろしく残酷だとか」


マフィアの武闘派"黒蜥蜴"……

もしそんな奴らが事務所を襲って来たら…


そう思うと、背筋が震えた。



僕はすぐ側にある公衆電話の戸を開けると、ポケット中から名刺を取り出す。

樋口さんからもらった名刺だ。

僕はその番号へと電話をかけた。


『はい、何方ですか?』


「僕だ」


『人虎!?

…先日はお仲間に助けられたようですが次はそうはいきませんよ。

それでご用件は?』


「僕は探偵社を辞める。
辞めてひとりで逃げる、捕まえてみろ。
……Aももう、関係ない」


『成る程…
"だから探偵社とあの子には手を出すな"と?』


僕はその問いには答えずに電話を切った。


……これでいい。

これで、いいんだ。









探偵社を出て行くため、僕は探偵社に戻って来ていた。

自分の荷物をまとめて、もうきっと戻ることはない。


「敦、おかえり。
…またどこか行くの?」


Aが荷物をまとめている僕を見て近くに寄ってくる。
……これで、最後だ。


「A、何かあったら太宰さんや国木田さんにちゃんと言うんだよ」


「…なに、どういう意味?」


「僕なんかよりも頼りになるだろ?もう安心だよ」


僕の言っていることと荷物をまとめる様子を見てAは眉間にしわを寄せる。

…気づいてしまったかな。


「敦、私も行く」


「ダメだ」


「…やだ」


「A!」


…こんな大声をAに出したことなんて一度もなかった。
ごめんね、A。

Aに迷惑なんてかけられるはずがない。
大切だからこそ、君をここに置いて行くんだ。

…大丈夫。
Aはここで幸せに暮らして。


「お願いだから、言うことを聞いて…?」


Aは僕の目を見つめて、唇を噛んだ。
そっと頭を撫でてやると俯いてしまう。


僕はAの頭から手を離すと、探偵社の扉を出た。






「…ひとりに、しないで……」





ーAの言葉も届かぬまま。

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コトノハ - 一気読みしてしまいました!敦君の優しさと男前さが上がっていて、個人的にすごくドキドキさせられています!更新楽しみに待ってます!頑張ってくださいね! (2019年4月21日 8時) (レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
十六夜(プロフ) - あいさん» ありがとうございます。更新、遅くなってしまいすみません。なるべく早く更新できるよう頑張ります(*^^*) (2018年8月10日 21時) (レス) id: 0ec73a354d (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 何度も読み返すくらい好きなお話です! (2018年8月8日 17時) (レス) id: 66c6f3f00c (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 面白いお話で続きが気になります!更新頑張ってください! (2018年7月16日 16時) (レス) id: 66c6f3f00c (このIDを非表示/違反報告)
十六夜(プロフ) - ルカさん» ありがとうございます。更新、遅くなってしまいますがお付き合い頂けると幸いです(*^^*) (2018年6月20日 0時) (レス) id: 0ec73a354d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十六夜 | 作成日時:2018年3月11日 10時

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