【episode 55】#Atsushi ページ7
「皆殺しだってよ」
「非道いな…」
僕は先程爆発のあった場所へ来ていた。
乱れた息を整わせながら爆発現場をただ見上げる。
周りにはたくさんの人が溢れかえっていた。
「軍警が言うにはマフィアの武闘派、その中でも凶暴な実働部隊"黒蜥蜴"って奴らの仕業だって」
「黒蜥蜴?」
「特殊部隊なみに戦闘術を持ち、しかも恐ろしく残酷だとか」
マフィアの武闘派"黒蜥蜴"……
もしそんな奴らが事務所を襲って来たら…
そう思うと、背筋が震えた。
僕はすぐ側にある公衆電話の戸を開けると、ポケット中から名刺を取り出す。
樋口さんからもらった名刺だ。
僕はその番号へと電話をかけた。
『はい、何方ですか?』
「僕だ」
『人虎!?
…先日はお仲間に助けられたようですが次はそうはいきませんよ。
それでご用件は?』
「僕は探偵社を辞める。
辞めてひとりで逃げる、捕まえてみろ。
……Aももう、関係ない」
『成る程…
"だから探偵社とあの子には手を出すな"と?』
僕はその問いには答えずに電話を切った。
……これでいい。
これで、いいんだ。
*
探偵社を出て行くため、僕は探偵社に戻って来ていた。
自分の荷物をまとめて、もうきっと戻ることはない。
「敦、おかえり。
…またどこか行くの?」
Aが荷物をまとめている僕を見て近くに寄ってくる。
……これで、最後だ。
「A、何かあったら太宰さんや国木田さんにちゃんと言うんだよ」
「…なに、どういう意味?」
「僕なんかよりも頼りになるだろ?もう安心だよ」
僕の言っていることと荷物をまとめる様子を見てAは眉間にしわを寄せる。
…気づいてしまったかな。
「敦、私も行く」
「ダメだ」
「…やだ」
「A!」
…こんな大声をAに出したことなんて一度もなかった。
ごめんね、A。
Aに迷惑なんてかけられるはずがない。
大切だからこそ、君をここに置いて行くんだ。
…大丈夫。
Aはここで幸せに暮らして。
「お願いだから、言うことを聞いて…?」
Aは僕の目を見つめて、唇を噛んだ。
そっと頭を撫でてやると俯いてしまう。
僕はAの頭から手を離すと、探偵社の扉を出た。
「…ひとりに、しないで……」
ーAの言葉も届かぬまま。
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コトノハ - 一気読みしてしまいました!敦君の優しさと男前さが上がっていて、個人的にすごくドキドキさせられています!更新楽しみに待ってます!頑張ってくださいね! (2019年4月21日 8時) (レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
十六夜(プロフ) - あいさん» ありがとうございます。更新、遅くなってしまいすみません。なるべく早く更新できるよう頑張ります(*^^*) (2018年8月10日 21時) (レス) id: 0ec73a354d (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 何度も読み返すくらい好きなお話です! (2018年8月8日 17時) (レス) id: 66c6f3f00c (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 面白いお話で続きが気になります!更新頑張ってください! (2018年7月16日 16時) (レス) id: 66c6f3f00c (このIDを非表示/違反報告)
十六夜(プロフ) - ルカさん» ありがとうございます。更新、遅くなってしまいますがお付き合い頂けると幸いです(*^^*) (2018年6月20日 0時) (レス) id: 0ec73a354d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十六夜 | 作成日時:2018年3月11日 10時