【episode 91】#You ページ43
「どうしよう…」
私は先ほどの薄暗い袋小路で一人、佇んでいた。
中原さんと芥川は何故か私を残して帰ってしまったし、帰り道がわからない。
あのとき二人に着いて行っていればよかった。
私は心を落ち着かせながら、太宰さんへと電話をかけた。
すると突然、鳴り響く電子音。
その音はだんだんと近づいてきている。
コール音が止み、電話が通じた。
私はすぐに口を開く。
「だ、太宰さん……?」
『なあに?』
その声とともに曲がり角から顔を出した太宰さん。
不安が消え去り、ほっと胸をなでおろした。
「太宰さん…!
どうしてここが…」
「あぁ、それはね…」
にこにこと笑いながら私の元へ近づいてくる太宰さん。
そんな太宰さんを押しのけるように何かが私に向かって走ってくる。
「A!!」
「わっ…敦…!」
「良かった、無事で、
怪我は?してない?大丈夫なの?」
いつもより強い力で私の肩に触れる敦。
掴まれている肩が少しだけ痛い。
眉を下げながら心配そうな顔をしている。
なんだか敦は武装探偵社に入ってから前よりも心配性になった気がする。
「芥川は?
太宰さんが言ってたんだ、芥川たちと一緒にいたって、」
大丈夫だよ、と敦に伝えるつもりだった。
「う、うん、
大丈夫、何もされなかったよ」
「本当?
前もそう言ったよね、あの時はちゃんと教えてくれなかったけど」
敦の優しい瞳が、少しだけ鋭くなった気がした。
心臓が嫌な音を立てている気がする。
敦、あのときの覚えてたんだ…
「大丈夫だよ、何もされてないから。
ね、ほら」
腕とか足とか、肌の出ている部分を敦に見せる。
敦はそれを軽く確認するとはぁー…と大きく息をはいた。
「そっか…
本当に良かった…」
ごめんね、と私が言うと敦は少しだけ咎めるような瞳をした。
「もう…勝手にいなくならないで」
そう言って私を抱きしめた。
言えなかった。
敦に、大丈夫だよ、と。
わからなかった。
敦に会えたことが、抱きしめられたことが嬉しくて幸せなはずなのに。
いつものように背中に手を回すことができなかった。
敦に、嘘をついているような気がした。
私の保持している異能力のことよりもずっと重い、罪悪感を感じた。
悪いことなのだろうか、
芥川と連絡先を交換するということは。
けれど私の心は黒くて重い塊を抱えてしまった気がした。
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コトノハ - 一気読みしてしまいました!敦君の優しさと男前さが上がっていて、個人的にすごくドキドキさせられています!更新楽しみに待ってます!頑張ってくださいね! (2019年4月21日 8時) (レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
十六夜(プロフ) - あいさん» ありがとうございます。更新、遅くなってしまいすみません。なるべく早く更新できるよう頑張ります(*^^*) (2018年8月10日 21時) (レス) id: 0ec73a354d (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 何度も読み返すくらい好きなお話です! (2018年8月8日 17時) (レス) id: 66c6f3f00c (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 面白いお話で続きが気になります!更新頑張ってください! (2018年7月16日 16時) (レス) id: 66c6f3f00c (このIDを非表示/違反報告)
十六夜(プロフ) - ルカさん» ありがとうございます。更新、遅くなってしまいますがお付き合い頂けると幸いです(*^^*) (2018年6月20日 0時) (レス) id: 0ec73a354d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十六夜 | 作成日時:2018年3月11日 10時