【episode 86】#You ページ38
街を行き交う楽しそうな人々。
そんな人たちの中、私たちは無言のままひたすら歩いていた。
私はどこへ連れて行かれるのだろう、もしかしたらもう敦に会えないのかもしれない。
そう思うと足が前へ進むのを拒んだ。
そのたびに拳銃がチャキ…という嫌な音をたてて私を威嚇する。
鞄の中で携帯が震えているのを何回か感じたが後ろに樋口さんがいるため取ることができない。
敦かもしれない、
出たいのに、出ることができない
怖い、どうしよう、誰か
敦……
敦を思ってもここには誰も来てくれない。
…違う、敦はここに来ちゃいけない。
大丈夫、何かいい作戦があるはずだ、
けれどいくら考えても作戦は思い浮かばなかった。
どれを試してみても結局私は敦には会えないだろう。
力強く拳を握ったその時、背後から大きなため息が聞こえた。
「…貴女を殺したりなんかしません。人虎も生け捕りとの命ですから」
樋口さんはそういいながらも私の背中に銃を突きつけた。
ひっ、と声が出そうになるのを必死に抑える。
だ、誰か助けて……
私の願いは届かぬまま、だんだんと人気がなくなりとうとうこの前のような袋小路へと入っていった。
奥に見えるのは二つの影。
「連れて来ました」
樋口さんからの拘束が解け、思わずほっと息をはきだした。
樋口さんの声に振り返る影たち。
おぉ、と一言呟くと靴音を鳴らしながら私の方へ近づいて来た。
「お前が葉山Aか？」
ぼんやりと見えるその人は帽子を被った男だった。
私の目の前で立ち止まると、いきなり顔を覗き込んでくる。
「っ、」
私は驚いて一歩後ずさる。
ちらりと男を見やると目を大きく見開いて私を見ていた。
「手前、どこかで…」
男はほんの少しの間考えると、私へと視線を向けた。
そして頭からつま先までじっと見たあと小さく舌打ちをした。
な、なんで……？
樋口さんに助けを求めようとした瞬間、奥からもう一つの影が近寄ってくる。
「もう下がっていい、樋口」
聞き覚えのある、咳と声。
コツコツと靴音を鳴らしながら現れたのは芥川だった。
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コトノハ - 一気読みしてしまいました！敦君の優しさと男前さが上がっていて、個人的にすごくドキドキさせられています！更新楽しみに待ってます！頑張ってくださいね！ (2019年4月21日 8時) (
レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
十六夜(プロフ) - あいさん» ありがとうございます。更新、遅くなってしまいすみません。なるべく早く更新できるよう頑張ります(*^^*) (2018年8月10日 21時) (レス) id: 0ec73a354d (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 何度も読み返すくらい好きなお話です！ (2018年8月8日 17時) (レス) id: 66c6f3f00c (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 面白いお話で続きが気になります！更新頑張ってください！ (2018年7月16日 16時) (レス) id: 66c6f3f00c (このIDを非表示/違反報告)
十六夜(プロフ) - ルカさん» ありがとうございます。更新、遅くなってしまいますがお付き合い頂けると幸いです(*^^*) (2018年6月20日 0時) (レス) id: 0ec73a354d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十六夜 | 作成日時：2018年3月11日 10時
