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【episode 84】 ページ36

「あれ…A、どうしたの?」


Aの異変に気がついた敦は顔を覗き込んだ。

けれどその瞬間、Aは勢いよく顔を上げ敦の口にクレープを押し込んだ。


「っんぐ!?」


「お、美味しいの、敦!
食べてみて!!」


きらきらと目を輝かせているA。
敦は驚きながらも一口、クレープを咀嚼する。

素直に美味しい、と敦も思った。


「確かに、美味しいね」


「そうだよね!
やっぱり敦もそう思うよね!」


普段は出さない大きな声で、Aは嬉しそうにそう言った。


「ここのクレープ、美味しいでしょう?
気に入っていただけましたか?」


「うん、クレープって美味しいね!
ナオミちゃん、ありがとう」


Aはナオミに向かってにっこりと微笑んだ。
それを見ていたナオミと谷崎はぴしり、と動きを止めて固まった。

ナオミは俯いて小さく震えると、Aをいつもの倍の力で抱きしめた。


「あーんっ、これです!!
兄様、見ました!?今のですわ!!
これからは兄様と末永くお幸せにぃぃ!!」


「い、いた…痛いよ、ナオミちゃ…」


ギリギリと締められていく体。
Aは手に持っているクレープを落とさまいと、必死に意識を飛ばさぬようにしていた。


「こらナオミ、Aちゃんが痛がってるだろ。
…ごめんね、Aちゃん、大丈夫?」


Aから柔らかくナオミを引き離して、解放した谷崎。
いつものようにニコニコと笑っている谷崎だが、耳は真っ赤だった。


「大丈夫です…」


クレープが無事だったことに安心したAはほっと胸をなで下ろす。
そんなAの口の横には、生クリームが少しついていた。
それを見つけた谷崎は思わず、小さく笑ってしまう。


「Aちゃん。ここ」


自分の口の横を指差して教える谷崎だが、全然気付かない。
谷崎がクリームを取ってあげようと手を伸ばした瞬間、目の前にいたAが後ろへとバランスを崩した。


「はい、とれた」


いつのまにかAの後ろにいた敦がAの口の横についたクリームを指ですくって取っていた。


「あ、ほんとだ…ありがとう、敦」


「どういたしまして」



敦は指ですくったクリームを自分の口へと運んだ。
そしてまたクレープに夢中になるA。
その空間はとても和やかなものだったが、敦の視線は谷崎を捉えて離さなかった。

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コトノハ - 一気読みしてしまいました!敦君の優しさと男前さが上がっていて、個人的にすごくドキドキさせられています!更新楽しみに待ってます!頑張ってくださいね! (2019年4月21日 8時) (レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
十六夜(プロフ) - あいさん» ありがとうございます。更新、遅くなってしまいすみません。なるべく早く更新できるよう頑張ります(*^^*) (2018年8月10日 21時) (レス) id: 0ec73a354d (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 何度も読み返すくらい好きなお話です! (2018年8月8日 17時) (レス) id: 66c6f3f00c (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 面白いお話で続きが気になります!更新頑張ってください! (2018年7月16日 16時) (レス) id: 66c6f3f00c (このIDを非表示/違反報告)
十六夜(プロフ) - ルカさん» ありがとうございます。更新、遅くなってしまいますがお付き合い頂けると幸いです(*^^*) (2018年6月20日 0時) (レス) id: 0ec73a354d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十六夜 | 作成日時:2018年3月11日 10時

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