【episode 71】#You ページ23
私の異能にかかり、時間の止まった芥川を一人残して私はひとり、探偵社へと帰っていた。
未だに残る唇の感触。
体温、息づかい、声ー
思い出しただけで寒気がする。
私はさっき、命を奪われかけた奴と唇を重ねた。
太宰さんとしたときより、今の方がずっと不快さが大きい。
とにかく今は早く探偵社に帰り、落ち着きたかった。
口をゆすいで、ミルクティーを飲んで、それからー
「Aさん！」
ぐいっと肩を引かれる感覚。
されるがまま振り返ると、そこには息を切らした賢治くんがいた。
「賢治くん…」
「はぁっ…良かった、無事だったんですね…！」
うっすらと額に浮かぶ汗。
賢治くんは袖で汗を拭うといつものようににっこりと笑った。
……そうだ。
私、賢治くんと買い出しに行ってたんだった。
おじさんと賢治くんがプランターの土いじりをしていたときに芥川に会って……
何も言わずに逃げてしまったんだ。
「荷物を置いていなくなってしまっていたので何かあったのかと…
あのときはプランターに夢中だったので、気づかなくてすみませんでした」
賢治くんは眉を下げて私に謝った。
違う、悪いのは賢治くんじゃない、
私は賢治くんに向かって頭を下げた。
「ごめんなさい！
何も言わずにいなくなってしまって……
迷惑かけて、ごめんなさいっ…」
「わっ…Aさん頭を上げてください！
何かあったんですよね、商店街の皆さんに聞いたら男に追いかけられていた少女がいたと聞いて…Aさんのことでしょう？」
探偵社でゆっくり話を聞かせてください。
にっこりと微笑んだ賢治くんに、申し訳なさでいっぱいになった。
【episode 72】#You→←【episode 70】#You
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 152人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
コトノハ - 一気読みしてしまいました！敦君の優しさと男前さが上がっていて、個人的にすごくドキドキさせられています！更新楽しみに待ってます！頑張ってくださいね！ (2019年4月21日 8時) (
レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
十六夜(プロフ) - あいさん» ありがとうございます。更新、遅くなってしまいすみません。なるべく早く更新できるよう頑張ります(*^^*) (2018年8月10日 21時) (レス) id: 0ec73a354d (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 何度も読み返すくらい好きなお話です！ (2018年8月8日 17時) (レス) id: 66c6f3f00c (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 面白いお話で続きが気になります！更新頑張ってください！ (2018年7月16日 16時) (レス) id: 66c6f3f00c (このIDを非表示/違反報告)
十六夜(プロフ) - ルカさん» ありがとうございます。更新、遅くなってしまいますがお付き合い頂けると幸いです(*^^*) (2018年6月20日 0時) (レス) id: 0ec73a354d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：十六夜 | 作成日時：2018年3月11日 10時
