世界で一番大切な人【中島敦】02

【episode 51】#You ページ3

"元ポートマフィアの太宰さん"


確かにあのとき芥川はそう言った。

こんな優しい笑顔をする人の前職がポートマフィアだった…


確かにこの人の笑顔は人を安心させるようなものだが、その裏には何か別のものがあるように私には思えた。
だからこそ私は詐欺師だったのではと思ったけど、まさかマフィアだったとは……


言い表せない複雑な気持ちだった。



「何か聞きたそうな顔だね？」


私の顔を覗き込んでくる太宰。

きっとこれから先、ポートマフィアと武装探偵社は敵対関係になるだろう。


「太宰さんは…本当にポートマフィアにいたんですか？」


「うん」


「…どうして武装探偵社に？」


「…それはまだ内緒。
私とAがもう少し仲良くなったら教えてあげないこともない」


太宰は眉を下げて笑った。

私はもう一つだけ、太宰に聞きたいことがあった。


「マフィアの人たちは…みんな強いんですか？」


太宰も含め、芥川や樋口さんは戦闘力に長けていたように思えた。
マフィアに属している人たちはみんな強いのだろうか。


敦はポートマフィアに狙われている。
守るためには力が必要だ。


私には敦だけではなく、守りたいものが増えたから。


私には力が必要なんだ。


「私…敦を…みんなを守れる強い力が欲しいです…」


強く、なりたい。


そう言うと太宰は私の元へと歩いてくる。

そして私の目の前まで来ると口を開く。



「それならまずは私を、みんなを信用することから始めてみようか」




…私にとっての世界は孤児院の中と敦だけだった。


始めて外に出て、たくさんのものに触れて。


そして武装探偵社の人たちと出会った。


慣れないことも、恐怖に思うこともたくさんあるし、不快に思うこともたくさんある。

けれど逃げていては先に進めない。



まずはこの人を、信じてみようと思う。

【episode 52】#Atsushi→←【episode 50】#You

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す