世界で一番大切な人【中島敦】02

【episode 62】#You ページ14

与謝野先生に頼まれ、ガラスを棄て探偵社に戻った時には、もうほとんど探偵社は元の姿に戻っていた。

けれど、乱歩さんと敦の姿が見当たらない。
どこへ行ったのかと国木田さんに聞くと、どうやら2人は先程言っていた殺人事件の応援に行ったらしい。

待っててくれれば良かったのにと少しだけ残念に思った。


「あれ…国木田くん、ここにあった茶菓子を知らないかい？」


「茶菓子？
俺はさっぱり…」


「あぁ、忘れてました！
もうお茶菓子切れちゃってたんでした！」


賢治くんは与謝野先生に今すぐ買ってきます！と言った。


「今すぐじゃなくても大丈夫だよ。
でも頼んでもいいかい？」


「任せてください」


そう言うと私の方へくるりと振り返った賢治くん。
私の元へ歩いてくるとにっこり笑った。


「Aさん、今から街へ行きますが一緒にどうですか？」


「街…？」


「はい、お買い物ついでに街を見て回りましょう」



街へお買い物…

私は迷いもなく、頷いた。

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