【episode 07】 ページ7
「それ、いつの話？」
太宰は顎に手を置きながら敦に問いかける。
「院を出たのが2週間前、川であいつを見たのが4日前…」
「確かに虎の被害は2週間前からこっちに集中している。
それに4日前に鶴見川で虎の目撃証言もある」
太宰は考えていた。
そしてちらりとAを見ると彼女と目が合う。
びくりと肩を震わせ、隣にいる敦の服の裾を握った。
「敦、もうかえ…
「君たち、これから暇？」
Aは勢いよく首を横に振る。
「いいえっ…
今から私たちは大切な用事が…」
「A…？」
「敦、帰ろう…
ダメだよこれ以上関わったら…」
敦の服を一生懸命引いて出口に向かおうとするA。
敦は不審に思いながらも席を立った。
「待ちたまえよ。茶漬けをタダであれだけ食ったというのに恩人の頼みも聞けないのかい」
「…奢ったのは俺だが」
「…うるさいな、国木田君は。
で、どうなの、Aちゃん」
「っ、感謝はしています、しても仕切れないほどに…
けどこれとは話は別です、きちんとこの礼は
返しますので…」
「そんなのいらないよ、今がいいんだ」
「っ…それなら私だけでやりますから…」
「私は君たち、と言ったんだ、言葉がわからないのかい？」
太宰の容赦のない言葉に悔しさでAの瞳に涙が溜まっていく。
それを見た国木田は太宰を止めに入ったが、太宰が聞き入れるわけもなく。
敦はAの頭を自分の方へ引き寄せると鋭く目を光らせ、太宰たちへ向き直った。
「…やります。
Aを泣かせた代償は大きいですよ」
「おぉ、こわい。
もちろんだよ、報酬はたんまりと出そう」
敦は強く拳を握ると、Aを抱く腕に力を込めた。
…報酬をもらえれば食いっぱぐれることはない。
少しの間だけでも飯にありつくことができる。
Aの服を調達することも…
「敦…やっぱり、」
「大丈夫だよ、A。僕がそばにいるからね」
敦は優しくAの頭を撫でる。
けれどAの表情は以前にも増して暗いままだった。
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十六夜(プロフ) - 胡蝶さん» コメントありがとうございます。励みになります。中也さんの登場が私自身も待ち遠しいです^ ^ (2018年3月10日 11時) (
レス) id: e6ba942cc6 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶 - 凄くおもしろかったです。夢主ちゃん、中也さんと気が合いそうですね。これからどんな展開になっていくのか楽しみです。 (2018年3月10日 0時) (レス) id: 7857e3d4af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十六夜 | 作成日時：2018年2月27日 22時
