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【episode 44】#You ページ44

「僕の"羅生門"は悪食。凡ゆるモノを喰らう。
抵抗するならば…次は脚だ、人虎」


それとも娘からいただこうか?

ゆらりと怪物が揺れて、私のことを見つめているように見えた。
敦は私を庇うように、手を広げる。


「やめろ!Aは…関係ない!」


「ならば身を差し出せ人虎」


「……それは、」


「敦、くん…逃げ、ろ…
Aちゃんを連れて、早く……」


苦しそうな、今にも耐えそうな息を交えた谷崎さんの声が聞こえた。
続けてうめき声をあげたナオミちゃん。

二人にまだ息はある。


"お前たちも今日から探偵社が一隅。
社の看板を汚すような真似はするな"


国木田さんの言葉が聞こえた気がした。


ここで諦めちゃいけない。
敦をポートマフィアなんかに渡したりしない。
こいつらを倒して、みんなで武装探偵社に帰るんだ。

敦の方を向くと重なる視線。
敦の目は入社試験で私を助けてくれたときのような強い目をしていた。

どうやら敦も私と同じ気持ちらしい。
ひとつ頷くと、敦も頷いてくれた。


「うわああああああ!!」


敦は叫びながら芥川へと走っていく。
私と敦に飛びかかってくる怪物を私たちは避けると、芥川の背後に落ちていた銃へ敦は手を伸ばす。


「A!!」


芥川の股の間を抜けて私のところに滑ってくる銃。
私は銃を素早く拾い上げると、芥川へと向け発砲した。
背後からは敦の放った弾丸が、正面からは私の放った弾丸が芥川の体へ突き刺さった。


仕留めた…?


警戒を解かずに芥川を見つめるとばちりと目が合う。
そして芥川は不敵に笑い、ぐるりと敦へ振り返った。
カランカラン…と芥川へと放った弾丸は足元へ音をたてて落ちていた。


「そ、そんな…何故……」


「今の動きはなかなか良かった。
しかし所詮は愚者の蛮勇…いっただろう。

僕の黒獣は悪食。凡ゆるモノを喰らう。
例えそれが"空間そのもの"であっても」


芥川の背中にあの怪物が敦に向けて吠えている。
地を震わすようなうめき声をあげて。
今にも敦の方へ襲い掛かりそうだ。


「銃弾が飛来し、着弾するまでの空間を一部食い削った。
槍も炎も空間が途切れれば僕に届かぬ道理」


「な……」


どんなに攻撃をしてもあの怪物に食い削られれば攻撃は届かない…

芥川を倒すことはできないってこと……?

目の前が真っ暗になった。
私たち、どうしたら……


「そして僕、約束は守る」


その刹那、芥川の怪物は敦へと襲いかかる。


「敦!!」


そして敦の足が宙を舞った。

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十六夜(プロフ) - 胡蝶さん» コメントありがとうございます。励みになります。中也さんの登場が私自身も待ち遠しいです^ ^ (2018年3月10日 11時) (レス) id: e6ba942cc6 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶 - 凄くおもしろかったです。夢主ちゃん、中也さんと気が合いそうですね。これからどんな展開になっていくのか楽しみです。 (2018年3月10日 0時) (レス) id: 7857e3d4af (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十六夜 | 作成日時:2018年2月27日 22時

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