世界で一番大切な人【中島敦】

【episode 33】#You ページ33

にこにこと微笑みながら私の腕に抱きついているナオミさん。
やめなよナオミ、と遠くで言っているのは恐らくナオミさんのお兄さんなのだろう。
ナオミさんが兄様と呼んでいたのを頭のどこかで覚えていた。


ナオミさんは私の持っている紙袋の中を覗くとまたにっこりと笑う。


「それはお姉さまのお洋服ですわね！
一緒にお着替えに行きましょう」


「え、あの、ナオミさん、」


「ナオミ、と呼んでくださいませ！
Aさんには将来、ナオミの本当のお姉さまになってもらうのですから♡」


「え？」


どういう意味かとナオミさんに聞こうとしたが、思いきり腕を引っ張られ部屋へと連れ込まれる。


「ちょ、」


「うふふ、さぁお姉さま。
お着替えの時間ですわ…♡」


「え、あ、ナオミさ…その、えっ、
あ…ああああああああああっ！？」


…その時のことはあまり思い出したくない。


「うふふ、お似合いですわ、
敦さんとお揃いですわね」


改めて自分の服装を見てみる。
確かに白と黒で統一されているのでお揃いな感じだ。

……お揃い、嬉しいな。


「さぁ行きましょう」


ほぼナオミちゃん(ナオミさんと呼ぶと何をされるかわからない笑みを返されるのでこう呼ぶことにした)に着替えさせてもらい、髪の毛もナオミちゃんに綺麗にしてもらった。
(ナオミちゃん曰く、これは低めのサイドポニーテールらしい)

そしてナオミちゃんに言われるまま部屋を出る。


こんな格好をしたことがないので、少し恥ずかしいが、ナオミちゃんが笑顔で似合ってると言ってくれたので嬉しかった。

緊張しながら部屋から出ると、敦、国木田さん、太宰、ナオミちゃんのお兄さんが待っていてくれた。

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