検索窓
今日:10 hit、昨日:0 hit、合計:77,207 hit

【episode 11】#You ページ11

私たちを空腹から救い出してくれた太宰や国木田さんには本当に感謝している。
あのままだったら私と敦は餓死していた。

…だけど、さっきも言ったようにそれとこれとでは話が違う。

…この場だけでいいから、この人をうまくかわして逃げることができれば。
恩を仇で返していることは百も承知だ。

だけど、私が一番に優先するものは


「敦!!」


自分の出せる限りの大きな声で名前を呼んだ。


「っ、莫迦!!」


敦は私をギロリと睨むと、がうとひと鳴きして私に向かって走って来た。

大丈夫。
敦は私に攻撃したりしない。


けれど、腕を強く引かれる感覚がして、足が宙に浮いた。
犯人は太宰。
私を抱きかかえて敦を避けていた。


「何するの!離してっ…!!」


私は懸命に太宰の腕の中でもがいた。

離せ、離せ。
私は敦とお前から逃げるんだ。


「っ、暴れるな!
今は彼からの攻撃を避けるのに手一杯で…」


「必要ない!!」


敦、
私は助けを求めるように敦へと視線を投げた。
鋭い敦の目とあった気がした。
敦は力強く鳴くと、近くにあった木箱を私たちに向かって投げて来た。


「おっと」


軽々と避ける太宰。
私は太宰に抱えられるまま何もできなかった。

敦からの攻撃を避け続け、私たちは壁に追い詰められていた。
敦は床を力強く蹴ると私たちに向かって飛びかかって来る。


「獣に喰い殺される最期というのもなかなか悪くはないが…

君では私を殺せない」


太宰は敦の額に触れると、大きな風が起きて私たちを光が包み込んだ。

みるみるうちに敦の虎化が解けて、人間の姿へと戻っていく。

なに、今のは……
唖然としているうちに敦はぽすん、と太宰の肩へ身を預けると男と抱き合う趣味はない、と言って投げ捨てる。
私は太宰を押しのけて、敦を抱えた。


「敦っ…」


敦を力強く抱きしめる。

…あったかい、
無事でよかった。


「おい太宰!」


聞き覚えのある声が倉庫に響く。
私は出入り口のシャッターに目を向けると、そこには国木田さんが立っていた。


「あぁ、遅かったね。
虎は捕まえたよ」


つかつかと歩いてくる国木田さん。
私と敦の姿をみると目を見開いていた。


「あ、敦君のほうね」


「小僧…じゃあそいつが」


「うん、虎の能力者だ。
変身してる間の記憶がなかったんだね」


「次からは事前に説明しろ。肝が冷えたぞ。
おかげで非番の奴らまで駆り出す始末だ。
皆に酒でも奢れ」


その瞬間、倉庫にたくさんの影が伸びた。

【episode 12】#You→←【episode 10】#You



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (30 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
57人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

十六夜(プロフ) - 胡蝶さん» コメントありがとうございます。励みになります。中也さんの登場が私自身も待ち遠しいです^ ^ (2018年3月10日 11時) (レス) id: e6ba942cc6 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶 - 凄くおもしろかったです。夢主ちゃん、中也さんと気が合いそうですね。これからどんな展開になっていくのか楽しみです。 (2018年3月10日 0時) (レス) id: 7857e3d4af (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:十六夜 | 作成日時:2018年2月27日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。