─平田side─（前編） ページ10
彼女との出会いは、学校生活に慣れてきた ある日の休憩時間の時だった。
僕は 自分のクラス以外にも、親交を深めようと他クラスに挨拶をしにいこうとした最中 前から大荷物を持った子が来ていた。
いつバランスを崩して大怪我をするかも分からない状況に、僕は悩むことなく 手を貸そうと近づいた。
平田 洋介「君、大丈夫？運ぶの手伝うよ」
そう言って 手前の荷物を持つと、さっきまで見えなかったその人の顔が見えた。
「え、そんな 悪いです...！」
「頼まれたのは私なんですから 他の人の手を煩わせるわけには......」
困ったように言う彼女のことを 放っておけないと思った僕は
平田 洋介「それで君が怪我をしてしまったら、君に仕事を任せた人も 責任を感じてしまうよ」
平田 洋介「こう見えて力はある方だから...遠慮なく 僕にも手伝わせてほしいな」
人を助けることを当然のように思い、彼女からいくつかの荷物を取り上げた。
「あ......それなら お言葉に甘えようかな...」
僕を同学年と判断したのか、彼女は安心してから 微笑んで言った。
平田 洋介「うん。これはどこまで持っていくの？」
「えっと...教員室までだよ」
平田 洋介「ここからだと、結構遠いね」
平田 洋介「どうして一人で持っていこうと思ったの？」
平田 洋介「誰かに手伝ってもらった方がいいと思うけど...」
「それは、その......私一人でもできるかなって思って...」
「あと...私でも 人の役に立てるんだと思ったら、やる気が湧いてきちゃって...」
気づいたらここまで来ていた、と言った彼女は 照れくさそうに笑った。
荷物を届けた僕たちは 教室に戻る際に、軽く自己紹介をしていた。
「手伝ってくれてありがとう！すごく助かったよ、私はA A。」
平田 洋介「Aさんだね。僕は平田 洋介、困った時はお互い様だよ」
「平田くんは優しいね、まさに"親切"を具現化した人みたい」
平田 洋介「そんなことないよ。」
平田 洋介「それに、僕が勝手にしたことだし...」
「でも そういうところがみんなに好かれてるんだろうなぁ」
平田 洋介「あれ...僕のこと、知ってるの？」
「うん！うちのクラスでも 結構平田くんは話題に上がってるよ」
平田 洋介「そっか......なんだか、嬉しいような恥ずかしいような...」
「ふふ。私でも分かるよ、平田くんはいい人だって。」
そう言って優しく微笑む彼女に、僕はもっと話してみたいと思った。
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作者名：CRONE | 作成日時：2024年3月11日 23時
