階段前〖踊り場付近〗へ（前編） ページ14
「階段前に行こう」
そう言った私は、いわれた通り階段前へ向かった。
階段前へ行くと 踊り場付近の手すりにもたれかかった彼がいた。
龍園 翔「よぉA。やっとお出ましか」
「え、えっと...遅れてごめんなさい」
龍園 翔「そんなビクビクすんなよ。何も怒っちゃいねえからよ」
「そ、そっか...。」
「...その 今日はどうして呼び出されたのか、理由を聞いても...？」
龍園 翔「ああ。いいぜ」
すると彼は 不敵に笑ったまま 私の目の前に、あるものを見せた。
龍園 翔「なあ、お前は...こいつについて知ってるか？」
龍園 翔「正直に答えろ。」
そう言って彼は 顔がもはやボロボロすぎて、誰かもわからない男子生徒から手を離すと その人の背中に足を置いた。
「ひっ......」
龍園 翔「おい どうなんだ？」
「(龍園くんはあまり気が長い方じゃないから...何か話さなきゃ......でも...判別できない...)」
そう思っていると、その男子生徒のものなのか 砂時計型のネックレスがポケットから飛び出していた。
龍園 翔「ハッ、洒落たもん持ち歩きやがって......こいつの何もかもが気に障る」
「この人 もしかして...」
龍園 翔「お前を俺の知らないところで...可愛がってたやつだ」
「...っ......」
私は、その男子生徒を見ながら 数日前のことを思い出していた。
──数日前、地味で冴えない私は 一介の男子生徒に目を付けられていた。
彼とは目が合う度に 無理を強いられ、言うことを聞かなければ 陰湿ないじめを繰り返されていた。
あるときは足をひっかけられ 転ばされたり、誰もいない階段から突き飛ばされたり......思い出すだけで 冷や汗が止まらなかった。
...そのうちの一人の男子生徒が 今目の前でうつ伏せになって倒れている、異常な事態に 思わず後ずさりをした。
龍園 翔「お前を傷つけたり、縋らせたりするのは俺一人だけで十分だっつーのによ。」
龍園 翔「AもAだぜ？俺にこのことを伝えずにいたんだからな」
龍園 翔「...なんで俺に言わなかった？」
私は 圧倒的に逆らえない雰囲気をまとった 不機嫌に言う彼の顔を、見つめることしかできなかった。
何も言わずにいた私にしびれを切らした龍園くんは
龍園 翔「もう一度聞く。なんでこいつのことを俺に言わなかった？」
すっかり怒りをあらわにした状態で言った。
...張り詰めた雰囲気に、私は息を呑んだ。
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作者名：CRONE | 作成日時：2024年3月11日 23時
