久しぶり ページ41
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健「Aになにしてんだよ」
ギリギリと力を込めながら彰吾の胸ぐらを掴む健太は何度か見たことのある"最強のヤンキー"の顔をしていて、低い声で彰吾へ詰め寄る健太は今にも彰吾に殴りかかりそうだ。久しぶりのヤンキーモードの健太に思わず怖くて固まっていたけれど、ハッとして慌てて健太を彰吾から引き離す。
「っ、健太まって、やめて!」
健「は?なんで?」
「その人、わたしの同僚だから!」
健「………どうりょう?」
止めに入ったわたしをイラついたように見ていた健太は、わたしの言葉を聞いた途端ぽかんとした顔でわたしと彰吾を交互に見比べる。少し咳き込みながら健太から離れた彰吾が「健太ってもしかして、」と呟いた。
健「どうりょう………」
「そう!同僚!!だから大丈夫だから!」
健「わーごめん!おれてっきりストーカーかと思っちゃった!」
わたわたしながらごめんねごめんねって彰吾に謝る健太はさっきまでの姿とは別人で、相変わらずスイッチのオンオフがすごい。彰吾が実際にそれを見るのは初めてだからか今度は彰吾がぽかんとしている。
彰「ストーカーって、笑」
健「ごめんねほんと、痛かった!?おれ力加減わかんなくて…」
彰「…や、大丈夫っす笑」
健太の豹変ぶりに笑いを堪え切れてない彰吾が「俺帰るわ」とわたしの方へ向き直した。申し訳なさそうな顔で「本当にごめんね」と謝る健太に「ああ、全然」と笑う彰吾はやっぱり優しいんだと思う。普通いきなり現れた知らない人にストーカー扱いされたら怒るに決まってるのに。
「あの、彰吾、ごめんね」
彰「あーいいよ。それより、よかったな」
帰ってきたじゃん、とわたしにしか聞こえない声で言った彰吾がわたしの肩をぽん、と叩いた。小さくうなずくわたしをみて優しく笑った彰吾は、後ろ手でひらひらと手を振って帰っていった。
健「……さっきの人おこってた?」
「ううん、怒ってないよ。大丈夫」
健「そっか、よかった」
「………久しぶり、だね」
健「……うん」
彰吾が帰って二人きりになった途端、急に何を話せばいいかわからなくなる。ずっと会いたかったはずなのに、数ヶ月前まで一緒に暮らしていたはずなのに。うまく声が出なくて、頭の中で一生懸命言葉を探すけれど何も言えないまま沈黙を続けて、やっとの思いで発したのは「家、入る?」で、うん、と小さく返事をした健太と一緒に、わたしは部屋へ戻った。
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sanaman.(プロフ) - ★★★★★ (2020年3月30日 3時) (レス) id: 70769692b3 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - いけめんくん (2020年2月21日 6時) (レス) id: 0498cf0682 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぺこ | 作成日時:2019年9月15日 10時