いけめんくん拾いました【神谷健太】 (ページ39)

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背中越しにページ39

健太 side.

瑠「Aちゃんに会いたくなったの？」
健「…なんかさ、好きな女に堂々と好きだって言ってるの、いいなって思っちゃったんだよね」

俺の妹の彼氏になったらしいまこっちゃん。俺に挨拶にきたあの日、全身から好きだって気持ちが溢れてて正直羨ましいって思った。そんなふうに素直になれたらきっと幸せだ。

瑠「ふーん…妹は？もういいの？」
健「いいっていうか…まこっちゃんならあいつのこと安心して任せられるかな、とは思えた」
瑠「へえ…成長したね」
健「うるさい」

ずっと俺が守んなきゃって思ってた妹は、いつのまにか守ってくれてそばにいてくれる大事な奴ができたらしい。幸せそうに笑うあいつの姿を見て少し寂しい気持ちにもなったけど、心の底から良かったって思えた。世界中の誰よりも幸せになれ、って思った。

瑠「じゃあ、今度は健太の番じゃない？」
健「……でも、今さらAのところには」
瑠「…あー、そういえば言うの忘れてた」

俺の言葉を遮って、瑠唯がわざとらしく声を上げた。なんだよ、と顔をあげれば俺の方を見てにへ、と笑う瑠唯と、顔を顰める俺。

瑠「例の俺の先輩の大学時代からの後輩で、Aちゃんの会社の同期の男がいるんだけど。そいつ、Aちゃんのことずっと好きらしいよ」
健「は？だからなに…」
瑠「いや？ただそいつからすれば健太がいなくなって傷ついたAちゃんを口説く絶好のチャンスだなって
思っただけ」

瑠唯のその言葉を聞いた途端、変な汗が出てきた。俺のことを好きって言ってたAが、いきなりいなくなって連絡もしないまま数ヶ月間も行方をくらました俺を好きでい続けてくれてる保証なんてどこにもないんじゃないか。

健「っ、ばかるい！そういうことは早く言えよ！」
瑠「いや言ったところでずっとウジウジしてたじゃん」
健「あーもーおまえほんとうるさい！きらい！」
瑠「うわ、なにそれ子どもかよ」
健「うるさい！とにかくおれ帰るから！」
瑠「は？帰るってどこに？」
健「実家！荷物まとめて明日Aんとこ帰る！」

るいのばーか！と最後に子どもみたいなセリフを言い捨てて、いまだに座り込んでいる瑠唯に蹴りを一発入れると「いってえ！」と瑠唯が叫んだ。

瑠「っばか健太！たまには連絡しろよ！」

バタバタと走る俺の背中に届いたその言葉に俺は返事をしなかったけれど、それでも、背中越しに伝えたありがとうは、瑠唯に伝わってるはず。

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