いけめんくん拾いました【神谷健太】 (ページ35)

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妹離れページ35

健太 side.

瑠「…それ、妹のこと？」

俯いたまま何も言葉を発さずにこくんと頷いた俺を見ていたのか、瑠唯が小さくため息をつく声が聞こえた。

瑠「健太さあ、いい加減妹離れしたら？」
健「……は？」
瑠「妹、もう高校生でしょ？いつまでも健太がそばにいるような年でもないでしょ」

瑠唯の言葉に思わず上げた顔をもう一度下へ向ける。妹離れ、なんて考えたことなかった。っていうかそんなのするつもりもなかったし。

瑠「……それとも、あのときのことまだ自分のせいだって思ってんの？」
健「っ、……」

瑠唯が言う「あのときのこと」……あいつが、俺のクラスメイトに襲われそうになったときのことだ。まだ中学生だったにも関わらず、妹を襲おうとしたクラスメイトを、

ーーーー俺は、一人で半殺しにした。

健「…べつに、そんなんじゃない」
瑠「あのときのこと忘れろとは言わないけど、別に健太がいつまでも責任感じる必要はないでしょ」

………ちがう。
責任を感じてるんじゃない。あのときは俺がいなかったらあいつは確実に傷ついてた。俺がいたから何も起こらずに済んだ。むしろ俺がいたおかげであいつは助かったって言えるくらい。………だから、だ。俺が守んなきゃいけない、俺がそばにいなきゃって思うようになって、その考えが抜けなくなったのは。

瑠「…おまえは一体なにに捉われてんの？」

隣から感じる瑠唯からの視線に耐えきれなくなり、もう一度俯く。なにに、なんてそんなの分からない。ただ一つわかるのは、今まで俺にとって妹は俺の全てだった、から。

瑠「本当はAちゃんのそばにいたいんじゃないの？」
健「……それは、」
瑠「違うって？じゃあなんで指輪なんて残したの」
健「……………、」

瑠唯の言うことは全部俺にとっては痛いところを突いてくる言葉ばかりで。妹のそばにいなきゃって思ってるのも、そばにいてやりたいって思ってるのも、守りたいって思ってるのも全部嘘じゃない。嘘じゃない、けど。

それでも俺の中に新しく生まれた感情。
…Aのそばにいたいって思うこの気持ちも、きっともう、見て見ぬふりなんてできない。

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