いけめんくん拾いました【神谷健太】 (ページ32)

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待っててあげてページ32

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陸「瑠唯、急に呼び出してごめんな」
瑠「いえ、また誘ってください」
「あの、本当にありがとうございました」

お会計を終えて外へ出ると、夜のせいか少しだけひんやりとしていた。最後にもう一度与那嶺さんにお礼を言うと、優しく笑った与那嶺さんがそれ、とわたしの右手を指さした。

瑠「指輪、もしかして健太にもらったの？」
「あ、はい……たぶん」
瑠「たぶん？」
「…健太がいなくなった日、目が覚めたらはめられてたんです。だから確信はないけど、きっと健太だろうなって」
瑠「…………へえ」

ふっと笑ってそっかそっか、と呟いた与那嶺さんはどこか嬉しそうな、楽しそうな顔をしてる。なんだろ、と不思議に思って陸さんと二人で顔を見合わせて首を傾げてると、そんなわたしたちに気づいた与那嶺さんが「ああ、」と声を上げた。

瑠「いや、あの健太が珍しいと思って」
陸「珍しい？」
瑠「はい。健太そんなキャラじゃなかったんで」

くすくす笑う与那嶺さんの言ってる意味がいまいちわからなくて、頭にハテナが浮かぶわたしと陸さん。与那嶺さんの中の健太はいったいどんなキャラだったんだろう。

瑠「ショック受けないでほしいんだけど、健太あのルックスで喧嘩も強いからモテるんだよ」
「ああ…ですよね」
瑠「昔から女の子なんか腐るほど寄ってくるんだけど、健太はどんな子にも本気になることなんかなかったのね。まあそれも妹がいるからなんだけど」
陸「……シスコン？」
瑠「気持ち悪いくらいシスコンです。妹第一だから他の女の子なんか可哀想なくらいの扱いで。遊んで捨てて遊んで捨てての繰り返しだったんだけど」

そう言って苦笑いする与那嶺さんの言葉がショックじゃないと言えば嘘になる、けど、なんとなく分かってたことだ。いっしょに歩いてるときの周りの女の子からの視線を何度も感じたことがある。

瑠「…でも、Aさんは違ったんだなって思って」
「……え？」
瑠「健太が女の子に指輪プレゼントするなんてあり得ないことだよ。初めてなんじゃない？よっぽどAさんのこと本気なんだね」

そう言って優しい顔で笑う与那嶺さんは、最後に「きっと健太はAさんのところに戻ってくるよ」と言ってくれた。

「……そう、ですかね」
瑠「俺の勘は当たるから大丈夫。だから、健太のこと待っててあげて」

それだけ言うと、陸さんに頭を下げて車に乗り込んだ与那嶺さん。走り出した車に向かって、わたしも目一杯頭を下げた。

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