いけめんくん拾いました【神谷健太】 (ページ16)

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今だけはページ16

健太 side.

隣で眠るAの頬を撫でてると「ん、」と不意に声を漏らしたA。起こしたかなって焦って手を引っ込めるけど、どうやら寝言だったらしい。

健「…好き、ね」

Aに出会ったのはほんと偶然で、酔っ払いに絡まれてたAをたまたま助けたってだけで。住むところが見つかるまでお世話になるつもりだったのに、いつのまにかAと一緒にいるのが楽しくなってた。そんな中好きなんて言われたらもう俺の気持ちも止まらなくて。キスして、そのままAと一つになった。今までいろんな女を抱いたりしたけど気持ちが満たされることはなくて、女を抱くことなんてただの暇潰し程度にしか考えてなかったのに、Aを抱いたときどうしようもなく愛おしくて、ガラにもなく幸せだと思ってしまった。このままずっと一緒にいられたら、なんて思ってしまった。

……ずっと一緒になんて、いられるわけないのに。

「ん………けんた…？」
健「おはよ」
「……ずっと起きてたの？」
健「Aの寝顔見てた」

まだ眠そうに目を擦るAの髪を掬って口付けると恥ずかしそうにしながら俺の胸に擦り寄ってくるA。そっと抱き締めると俺と同じシャンプーの香りがして、それだけで幸せだと感じる。

「………けんたいい匂いする」
健「そう？Aと同じ香りだよ？」
「うん…でも、健太っぽくてすき」

嬉しそうに笑って俺に抱きついてくるA。Aの口から発せられたすきって言葉に胸が締め付けられる。おれもすきだよ、なんて、俺が言うには無責任すぎる。

健「………ごめんね」
「え？」
健「ううん、なんでもない」

ずっと一緒になんていられない。そう分かっていながら中途半端にAに手を出して、きっとAのこと傷つけてしまう。これ以上そばにいちゃいけない。分かってる、分かってるけど。せめて今だけは、と少し強引にAの唇を奪った。

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