ありがとう ページ42
慎 side.
とりあえず母さんに会う前に目の前の男をむりやり叩き起こす。目を覚ました途端怯えたような目で俺を見る男の胸ぐらを掴んで近くの壁へ押し付けるとまだ体に力が入らないのか今にも崩れ落ちそうになる男。
慎「…本当は殺してやりたいけど」
男「ひっ…」
慎「あいつの悲しむ顔見たくないからやめとく」
本当は許せない。Aに触れたこと、Aを怖がらせたこと…Aを泣かせたこと。あの泣き顔を思い出しただけで今すぐにでも殺してやりたいけど、そんなことしたらAのそばにいられなくなるから。
慎「ただこれだけは言っとく。…今度あいつに近づいたら今度こそ殺すから」
そう言って掴んでいた胸ぐらを離して床に叩きつけるとふらふらしながら逃げていった男。…あとは母さん、か。スマホを取り出して連絡先の中から母さんの番号を探し出すけど、指が震えてうまく操作できない。ようやく"母親"とよそよそしく登録された名前を画面に表示した途端、目眩とともに吐き気が襲ってきた。思わず口元を手で覆って座り込んだとき、画面上に表示されたメッセージを知らせる通知。それはAからで、ただ一言「待ってる」の言葉だった。それを見た瞬間気づいたら母さんの番号へ発信ボタンを押してた。耳に届く無機質なコール音。数コール鳴ったあと、繋がった電話に心臓の音が大きくなるのがわかった。
『……はい』
慎「…俺、だけど。今から会える?」
電話越しに聞こえる母さんの声はまるで知らない人みたいで、身体中が冷たくなる。電話を終えてしばらく経ったあと、ガチャリと音がして玄関をみると母さんの姿。
母「…珍しいわね、あなたが会いたいっていうなんて」
慎「ちょっと、話あって」
母「なに?心配しなくても家なら今日出てくわよ」
慎「…俺、昔母さんに言ったよね。産んでくれなんて頼んでないって」
母「………」
慎「あれ、撤回する」
驚いたように俺を見る母さんの前へ立つ。ずっと、生まれて来なきゃよかったって思ってた。顔も知らない父親からも、俺を育ててくれたはずの母親からもそれを望まれてなかったと思ってたから。勝手に作って勝手に産んだのはそっちだろってずっと思ってた。……でも、
慎「Aに出会えたのは母さんのおかげだから」
母「…………慎、」
慎「…だから、ありがと」
そう言った途端母さんの頬に涙が流れて、泣きながら何度もごめんねって謝る母さんから、俺はもう逃げたいなんて思わなかった。
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あや - 読ましてもらってますこれからもがんばってください!!!!!!!!!!! (2019年9月29日 13時) (レス) id: 674af23c92 (このIDを非表示/違反報告)
ぺこ(プロフ) - 佐野慎さん» ありがとうございます!わたしもまことくん推しでついまことくん贔屓になるのでぜひまこ推しの方に読んでいただきたかったので嬉しいです、、! (2019年9月16日 22時) (レス) id: 73513cd31a (このIDを非表示/違反報告)
ぺこ(プロフ) - 狼さん» ありがとうございます、、!これからも守られますよ〜〜!! (2019年9月16日 22時) (レス) id: 73513cd31a (このIDを非表示/違反報告)
ぺこ(プロフ) - さくらさん» お返事遅くなりました、、ありがとうございます!これからも更新頑張ります!! (2019年9月16日 22時) (レス) id: 73513cd31a (このIDを非表示/違反報告)
佐野慎(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます!!まこっちゃあああん(推し)!!無事であってほしいです…!急なコメント失礼しました笑。 (2019年9月15日 20時) (レス) id: eb52afa9d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぺこ | 作成日時:2019年8月31日 13時