シンデレラレボリューション【伏黒恵】

#44 ページ45

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でも結局のところ、そんな事をしている自分がよく分からなかった。

そもそもこの沖縄への任務も、さっさと呪霊を祓ってさっさと帰宅する、それだけの事だと考えていたのに。なんでこんなに色んな事が起きてんだ、と。


初めてだ...こんなに毎回毎回、衝動的に体が動く経験は。あいつが、Aが、俺を狂わせている。

そんな事はとうに分かっていたけれど、改めて考えるとどうしようもない気持ちになった。



「好き」という感情が分からなくて怖い。

そもそもまともに恋愛などしたことがなかった。
中学の頃は色々と反抗的で、あらゆる物事に反発しては周りを困らせた。好きな人など作る余裕も無かったし、作ろうとも思わなかった。


そして生まれも育ちも不遇な俺は、気付けばとても冷めた人間になっていた。無理だと思えばすぐ諦める、保守的でいつも一歩うしろから物事を眺めていた。


でもAはそんな俺の心の中にいつも勝手に入り込んできたんだ。


...うぜぇよ。やめてくれよ。
お前のその誰にでも優しい態度が、俺を狂わせるんだよ。


土足で俺の心の中に入ってくるのは釘崎や虎杖も同じかもしれない。
でもAだけは何故かあいつらと少し違う気がした。それが何故なのか分からなくて余計モヤモヤとする。


好きってなんだよ、分かる訳ねぇだろ。



このまま高専に戻り釘崎や虎杖と4人で過ごす日々に戻ったら、この出来事は忘れられて行ってしまうのか？
また何もなかった日々のように、1人の友人としての近いようで遠い距離を歩んで行くしかないのか？

これだけ俺を振り回しておいて？


そんな事をいちいち考えてしまう自分が自分じゃないみたいで嫌だった。
頭では「そんなことを考えるな」と思っていても、気付けば勝手にあいつのことを考えしまうんだ。



"誰にでも人懐っこいAが俺にも懐いて来ただけ。"
それでしかないだろ？勘違いすんなよ。

...そうは思っても。




そんなことを考えていると余計にムシャクシャして来て、1人で頭を抱むことしかできなくて、結局何の答えも導き出せない自分が更に嫌になった。



この辛さが、好きってことなんだろうか。

なぁ教えてくれよ...






Aから預けられたキャリーケースを少しだけ強く握った俺は、またひとつ溜め息をついた。






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