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「つかお前そのまま寝んのか」
早く寝よう、そう思って目を瞑ろうとしたのに次は恵が口を開いてきた。
『え?ちがうの?』
「いや...なんかくっつきすぎじゃねえかと思って」
『なに、恵照れてるの?こういうの初めて?』
「それは関係ねぇだろ別に」
少し照れた様子の恵にそんなことを言われてしまえばまた少しいじりたくなってしまう。寝ようと思ったのに。
恵の背中に回した腕に少し力を入れて抱きつけば、恵は「おい、本当にやめろ。普通に寝られなくなるだろ...」と素直な言葉を口から漏らした。
普段から恵は結構素直な方だとは思うが、素直さゆえにドライな部分が多いので、やっぱり今日は珍しいなとニヤニヤする。
そして顔を押し付けた恵の胸からはドキドキと早くなる鼓動が聞こえて来て、恵もこういうのでドキドキしたりするんだ。やっぱり普通の男の子なんだなと少し感心する。
まあ、こんなことしてる私が一番どうにかしちゃってるのは確かなんだけどさ。これはお酒のせいだし、と何回思ったかも分からない言い訳を心の中で繰り返した。
そして「ごめんごめん」と笑い「じゃあ寝るね」と少し体制を整えようとした時。
恵の大きな手が私の頬に添えられて思わず固まってしまう。
こうして今までくっついてはいたものの、ずっと恵の胸あたりに顔があったので間近のこの距離で顔を見るのは初めてだ。無性にドキドキしてしまう。
でもまって、さすがにこれ以上は...
さすがにダメだ、と私の頬に添えてあるその手を退かそうとした時。
「...顔、濡れてんぞ」
そう言って恵は私の頬にまだ残っていた涙を拭う。そしてそのまま「おやすみ」と呟いたかと思えば、私の頭を割れ物に触れるかのように優しく撫でた。
『...おやすみ』
...なにこれ。なんのつもりなの。
突然の出来事にまた私の胸は騒めく。
それに恵が変に手を出してきたりする男じゃないことくらい分かってはいたのに、少し意識してしまった自分が恥ずかしい。
叫びたくもなるけれど、そこはグッと堪えて目を瞑る。
けれど頬に残る恵の手の温もりも、頭を撫でてくれたあの感触もしばらく忘れられなくて目を閉じてもなかなか眠れなかった。
朝になったら酔いが覚めてる。
朝になったらこの事を全部忘れなきゃいけない。
そう思ったら、なぜかもう少しだけこの余韻と温もりに浸りたくなっちゃって。
寝る前に少しだけ色々思い出してキュンとしてしまったのは恵にも秘密にしよう。
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pikaito00(プロフ) - シン宣の歌詞に釣られてみに来ました^_^ (2021年5月4日 7時) (レス) id: 158c9172ac (このIDを非表示/違反報告)
ゆんな(プロフ) - めっちゃ最高です。一番大好きな小説になりました。更新楽しみにしています。 (2021年4月30日 3時) (レス) id: 41833ceea4 (このIDを非表示/違反報告)
マカロン食べた〜〜い(プロフ) - すごく最高です!楽しく読ませてもらってます!恵くん推しには堪らないです。。。すごくきゅんきゅんしながら読んでます!これからも更新楽しみにしてます! (2021年3月30日 4時) (レス) id: fbfb7b9b9e (このIDを非表示/違反報告)
うさぎあめ(プロフ) - りなさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます(T_T)過去最高だなんて!本当に私には勿体ないお言葉すぎます...!でもそう言ってもらえて、私も更新するのが楽しみになります(T_T)!ぜひこれからもよろしくお願いします! (2021年3月29日 22時) (レス) id: 45c7681717 (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - めちゃめちゃ最高です。今お気に入りにしているどの小説よりも過去最高レベルで好きです!更新が楽しみで楽しみで仕方ないです笑笑 これからも頑張ってください!応援してます! (2021年3月29日 14時) (レス) id: c3fe6adbae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うさぎあめ | 作成日時:2021年3月20日 7時