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『め、めぐみ?』
「...辛いなら、頼れ」
この状況がより一層訳の分からないものになってしまった。
されるがままに抱きしめられていると、私の嗚咽にも掻き消されてしまいそうなほど小さな声でそう呟いた恵。
ああ、きっと恵もお酒が回ってるんだな。
お酒のせいだよな。
ボーッとした頭でそんなことを考える。
けれど、不思議なことに突然抱きしめられても嫌だとは思わなかった。むしろそんな恵の優しさに余計涙が止まらなくなってしまった。
冷房のせいで少し冷たくなっていた体が恵の体温によって温かさを取り戻して来た。
抱きしめられて初めて気づく、恵の体の大きさ。普段ガタイの良い悠仁が隣にいるせいであまり気にした事がなかったけど、意外としっかりしてるんだな。
『ごめん、ごめんね...本当になんでもないからっ』
「なんでもないやつはこんなに泣かねぇだろ」
子どものように泣く私を更にぎゅっと抱きしめてくれる恵に何故か少し、ドキドキした。
しばらく部屋の入り口の前に立ったまま恵の胸の中で泣き続けていると、ふいに頭上から言葉が降って来る。
「...まじで手出したりとかしねぇから、今日は一緒に寝るか」
想像すらもしていなかった思いがけないその言葉に、ただでさえ回っていない頭が一瞬フリーズしかけた。
普段の私ならば「何言ってんの」と突き飛ばしてたかも知れない。けれど...今はこのぬくもりや優しさから離れたくない。悔しいけどそう思ってしまって、気づけば小さく頷いていた。
きっと寂しかったんだと思う。
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ベッドに入った私達は身を寄せ合う。
シングルベッドだからかなり狭いけど、抱きしめられた状態ならそれもちょうどいい大きさだった。
体勢辛くないか?と心配してくれる恵に、また小さく頷く。
ああこのことは明日には忘れよう。
今日だけ、今だけのことにしなくちゃ。
そう頭の中で繰り返す。
何回考えても、こんなの今朝までの私だったら発狂してぶん殴って逃げてると思う。でも今はなぜか自分の方からも恵のその温もりを求めてしまっていた。
...でも、だったら。今日だけなら。どうせ今日だけなんだから。少しくらい甘えてもいいよね。
そう思った私は、自分の腕もそっと恵の体に回した。恵は少しびっくりした素振りを見せたけど、そのまま更に強く抱きしめてくれた。
その温もりが今はただただ嬉しかった。
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pikaito00(プロフ) - シン宣の歌詞に釣られてみに来ました^_^ (2021年5月4日 7時) (レス) id: 158c9172ac (このIDを非表示/違反報告)
ゆんな(プロフ) - めっちゃ最高です。一番大好きな小説になりました。更新楽しみにしています。 (2021年4月30日 3時) (レス) id: 41833ceea4 (このIDを非表示/違反報告)
マカロン食べた〜〜い(プロフ) - すごく最高です!楽しく読ませてもらってます!恵くん推しには堪らないです。。。すごくきゅんきゅんしながら読んでます!これからも更新楽しみにしてます! (2021年3月30日 4時) (レス) id: fbfb7b9b9e (このIDを非表示/違反報告)
うさぎあめ(プロフ) - りなさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます(T_T)過去最高だなんて!本当に私には勿体ないお言葉すぎます...!でもそう言ってもらえて、私も更新するのが楽しみになります(T_T)!ぜひこれからもよろしくお願いします! (2021年3月29日 22時) (レス) id: 45c7681717 (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - めちゃめちゃ最高です。今お気に入りにしているどの小説よりも過去最高レベルで好きです!更新が楽しみで楽しみで仕方ないです笑笑 これからも頑張ってください!応援してます! (2021年3月29日 14時) (レス) id: c3fe6adbae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うさぎあめ | 作成日時:2021年3月20日 7時