甘ちゃん ページ36
*
港の中に、その船はあった。
春雨第七師団の団員達は、荷物を中に運んでいた。
阿伏兎は、それを手伝う事もなく立っていた。
眼前の街を見据えて、何かを待つように。
「そろそろ出航の時間だぞ」
「オイ、何やってんだ!」
団員達は一向に動かない阿伏兎に疑問を持つ。
「阿伏兎の奴。別れを惜しむ女でもできたか」
「アイツにそんな甲斐性あるかよ」
茶化すように笑いながら、船内に入っていく。
女には違いないが、彼等の言うような意味ではない。
目的は、もっと別にあった。
連れ出してほしい。
そう言った、あの子兎を待っていた。
そして、映ったのは最早見慣れた兎と兎のコンビ。
だがそこに母親らしき人物はいなかった。
暗く影のさした顔から感情は読み取れない。
息を吸い、声を出した。
「お袋はどうした。」
Aは何も言わない。
「母親を海賊船で攫おうなんざ、なかなか有望な悪タレと期待してたんだが見込み違いだったようだな。」
マントを翻し、船へと向かう。
「失せな。こっから先は、お前のような甘ちゃんの来る世界じゃねェ」
お前のような優しい兎にゃ似合わねェ。
心で付け足す。
わざわざ他人の治療をするような甘い人間。
優しい人間。
そんな彼女には、悪党の姿は似合わないと思った。
そして、去ろうとした。
ついてくるなとでも言うように。
「だったら。ガキ一人攫えないアンタも海賊失格でしょ。」
だが、Aはその気持ちさえ押し切って前に進もうとする。
自然と阿伏兎の足は止まった。
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宇宙 - 凄い面白いです!おススメします! (2019年11月24日 18時) (レス) id: 851b2213db (このIDを非表示/違反報告)
黒金 - あお果実さん» ありがとうございます!そう言ってもらえると、とても嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年3月6日 20時) (レス) id: 16e0ec3fb6 (このIDを非表示/違反報告)
あお果実(プロフ) - とても面白いです!これからも応援してます(*´∀`) (2019年3月6日 16時) (レス) id: 11c4dc89d1 (このIDを非表示/違反報告)
黒金 - momoさん» ありがとうございます!私も、こうして見ると何だかしみじみとしてしまいます・・・・。小さい頃から壮絶な人生送ってますよね・・・・。これからも更新がんばります! (2019年3月3日 23時) (レス) id: 16e0ec3fb6 (このIDを非表示/違反報告)
momo(プロフ) - 初めまして!銀魂の成り代わり小説少ないし、神威の成り代わり見た事無かったので書いてくれて嬉しいです!!こうやってみると神威恵まれ無さすぎて推せに推せる.......。これからも更新楽しみにしてます。無理をしない程度に頑張って下さい( *˙ ˙* ) (2019年3月3日 22時) (レス) id: afb06b4870 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒金 | 作成日時:2019年2月23日 22時