5匹 ページ6
フラーラが沈んでく。
なんで？どうして？何があった？
魔法をジェイドと撃ち合っていた。
俺がユニーク魔法でジェイドの風魔法をずらした。
ガラッと音を立てて珊瑚が崩れた。
珊瑚の上に寝ていたモカブラウンの塊が珊瑚から落ちていく。
「フラーラ！！！！」
力なく沈むフラーラは勢いを付けて下へ下へ落ちていく。
泳ぎには自信があった。
スクールの誰よりも速いと思ってた。
なのに力なく沈むフラーラには届かなくて。
届け届けと思ってた力いっぱい尾びれを動かしても届かない。
それ所か遠ざかってさえ居るように思えた。
叫んで叫んで今までに無いぐらい名前を呼んだ。
気だるそうなソプラノの声は返ってこない。
叫んで泳いでやっとフラーラを見つけた。思いっきり腕を伸ばした。
届いたのは微かな血の匂いと、呻き声のような叫び声が俺の体全体に届いた。
「フラーラ？」
力ない自分の声がイヤな現実味を持っていて頭の中がどんどん抜け出して空っぽになって行った。
フラーラがいつも自慢していた、とんがった尾びれが赤い珊瑚の下敷きになって。
尾びれの至る所から擦れたような傷がついていて血が漂ってる。
ボロボロ、ボロボロでてくる涙
「フラーラ！！！！」
八つ当たりのように泣きながらフラーラの名前を呼んだ。
『フロイド……？』
柔らかく微笑んだ初めて見た表情に心臓を掴まれた。
かすかに小さく耳に届いたのは「たすけて」だった。
「フロイド！！」
上を見るとジェイドが親父の前を泳いでこっちに来た。
青白い顔で焦りと涙で崩れた表情。きっと俺はジェイドよりも酷い顔なんだろうな。
「2人とも住処に戻っていなさい。この位ならきっと大丈夫だから」
親父は俺たちの頭を撫でて落ち着かせるように低い声でそう言った。
親父の言葉に頷いて、ジェイドと手を繋ぎながら2人で泣きながら帰った。
住処にはママがいてニッコリ笑って「おかえりなさい」って言ってくれた。
それに俺はまた、泣いた。
ママが俺たちを抱きしめてくれて、落ち着かせてくれた。ジェイドが何があったのか嗚咽混じりに告げた。
ママは驚きながら話を聞いてくれて、落ち着かせるように頷いてくれる。
「何があったかは分かったわ、あなた達はお部屋に行ってなさい。きっとすぐパパが帰って来るから」
そう言って俺たちの背中を押した。
部屋に行くまでにまたボロボロ涙が出てきた。
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作者名：涼 | 作成日時：2022年9月8日 18時
