34匹 ページ41
翌朝
オクタヴィネル寮にはフロイドの悲鳴が響いていた
何人かの生徒が早朝のフラーラの部屋の前に集まりバタバタと忙しない。
悲鳴をあげた張本人がTシャツにパンツという格好で飛び出したかと思えば、猛スピードでラウンジに向かい、秒で戻って部屋の奥へと入りすぐに出てくる。
フロイドの手には人魚がいた。
人型ではなく、海で過ごすあの人魚が。
魔法薬が切れてしまったのだと察した何人かの生徒がフロイドの後について行き。
残った多数の生徒は寝ぼけながらも、廊下の清掃準備を始める。
フロイドのおかげで火傷も酸欠もなく、ラウンジの大型水槽の中で眠りこけるフラーラ。
フ「マジで焦った……なんで魔法薬飲まなかったわけぇ？つかよく寝れんねこの状況で」
怒りと焦りと呆れでごちゃ混ぜになった感情を水槽の中に居るフラーラにぶつけるも、未だ眠っているため返事など来るわけもない。
くるっと自分の尾ひれを大事そうに抱きしめて眠るフラーラ。
人魚の稚魚は波に拐われないようにする為、海藻や仲間の尾ひれなどにくっつき眠る。
自身の尾ひれにくっついて眠るのは稚魚の名残……甘えん坊な証拠ともとれる。
呑気に眠るこのネコザメ。
ムカつく以上に可愛いが先立ち、何だかんだ許してしまう。
後でアズールに怒られても俺知らねぇーからと水槽のガラスを突く。
あの、フロイドさん！
ラウンジまで心配して着いてきた寮生に声をかけられ、彼らの元へ向かう。
フ「心配かけてごめんねぇ、あとオレがやっとくから他の奴らにも伝えといてーありがとね」
「分かりました。にしても珍しいですね薬の飲み忘れなんて」
フ「んねぇー、朝起きたら鱗出てんだもん……マジで焦ったわぁ」
「(え？一緒に寝てんの？一緒のベッドで？)まあ、大事無いみたいなんで良かったです。んじゃあ
戻りますね」
フ「あんがとねぇー」
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作者名：涼 | 作成日時：2022年9月8日 18時
