名を付けるならなんと呼ぶ Ⅱ【ONEPIECE】 (ページ8)

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◆ローside

ずっとスムーズに事は運んで行った。
何事もない様子で隣を歩いているAをちら、と見下ろす。
真っ直ぐ前を向いているが、暗闇でも鮮やかな緋がゆっくりと動いて、周囲を警戒している。
動きに合わせてふるえる睫毛が時たま光を反射するように瞳を飾っているのがおもしろくて、つい、ローはそれを眺めてしまった。

ほんの数秒の視線に気付いたのか、きょろ、と赤がこちらを除く。
なにか用か、という目線に、顎で指図してやると、ゆっくりとAは首を振った。
ローの目線の先にあった扉の先には何も無いらしい。

Aは感がいい。

此方の視線や表情の機微に敏感で、よく読み取る。
それはローの神経を逆撫でしたりせず、非常にストレスの無い、楽な対応だと言えるが、随分と繊細で疲れそうだな、と思った。
人の顔色を伺うなんてこと、ローはしない。

Aは何もずっとローの顔色を伺って行動している訳ではなく、正確に状況を判断し、いちいち指示を出さなくてもその時最善の選択を選んでくれる。
この時代を生き抜いていくに当たって、もちろん強く在ることは重要だ。全く必要ないとは言わねぇが、いくら強くても馬鹿は生き残れない。
それ程簡単な世界では、ないのだ。

その点、Aは優秀だ。
別に戦っても勝てるであろう敵に対しても警戒を怠らない。なるべく無駄な戦闘は避ける。
リスクヘッジが出来ている。そういった思慮深さは今後生き残っていくために必須だ。
この世界で曲がりなりにも1人で生きてきたという事も納得出来るものだった。